○奥州市自治基本条例

平成21年3月13日

条例第1号

目次

第1章 総則(第1条―第5条)

第2章 各主体の権利及び責務(第6条―第14条)

第3章 まちづくりにおける基本的事項

第1節 情報共有(第15条―第17条)

第2節 参画(第18条―第21条)

第3節 協働(第22条―第24条)

第4章 住民投票(第25条・第26条)

第5章 市政運営(第27条―第34条)

第6章 広域的な連携及び交流(第35条)

第7章 雑則(第36条―第38条)

附則

私たちの奥州市は、自立した自治と将来に誇れる地域づくりを目指し、水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町及び衣川村の5つの市町村が平成18(2006)年2月に合併してできたまちです。

西部には奥羽山脈の焼石連峰が中腹にブナの原生林を広げ、東部には北上高地が連なり、その山裾には里山の静かなたたずまいを残しています。中央部には、散居と田園風景が独特の景観を映し出す胆沢川の広大な扇状地と北上川の沖積層が広がっています。

北東北に位置するこの地は、時として厳しい自然に翻弄されながらも、互いを思いやり、助け合うことで、これを乗り越えてきました。この営みは、多彩な芸能や文化を育み、優れた先人を輩出するとともに、農業をはじめとした多様な産業を興し、今日の奥州市の発展の基礎をつくりあげてきました。

私たちは、この豊かな自然と先人たちが培ってきた産業や歴史・文化に誇りを持ち、それらを財産として、未来を担う子どもたちが「大好き」と思えるふるさとを築き、次の世代に引き継いでいかなければなりません。

地方を取り巻く状況が著しく変化している今こそ、私たちは、地方自治の本旨を見つめ直し、市議会、行政と情報を共有し、市政に参画し、ともに力を合わせて明日の奥州市を創造する仕組みをつくることが必要です。

私たちは、市民自らが考え、行動し、決定することをまちづくりの基本とし、奥州市民憲章の精神のもと、すべての市民が一体感を持ち、誰もが等しく、安全で安心して暮らせるまちを実現するため、奥州市の最高規範となる自治基本条例をここに制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、本市における自治の基本理念及び基本原則を明らかにし、市民、事業者、議会及び市(以下「各主体」という。)の役割、責務等を明確にするとともに、各主体間における情報共有、参画及び協働に関する基本的な事項を定めることにより、もって自立した地域社会の実現を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する個人をいう。

(2) 事業者 市内で事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。

(3) 市 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、農業委員会及び固定資産評価審査委員会並びに上下水道事業管理者の権限を行う市長及び病院事業管理者をいう。

(4) 参画 市の政策の立案、実施及び評価に至る過程において、責任を持って主体的に参加し、意思形成に関与することをいう。

(5) 協働 各主体が、互いの自主性を尊重しつつ、それぞれの役割と責任に基づき、対等な立場で相互に補完し、協力することをいう。

(6) まちづくり 目指すべき地域社会の在り方を達成しようとする取組をいう。

(最高規範性)

第3条 この条例は、本市が定める最高規範であり、各主体は、誠実にこれを遵守しなければならない。

2 市は、他の条例、規則等の制定又は改廃及びまちづくりに関する計画の策定又は変更に当たっては、この条例の趣旨及び目的を最大限に尊重しなければならない。

(基本理念)

第4条 本市は、市民一人ひとりの尊厳と自由を尊重し、市民自らの意思と責任のもと、公正、公平かつ平等な市民主体の自治を確立するものとする。

2 本市は、国及び他の自治体との適切な役割分担のもと、自主的かつ自立的な市政運営による各主体の協働を基本とした自治を確立するものとする。

(基本原則)

第5条 基本理念を実現するため、本市の自治は、次に掲げる基本原則に即して行われなければならない。

(1) 情報共有の原則 各主体は、市政に関する情報を互いに共有することにより、市民主体のまちづくりを推進するものとする。

(2) 参加の原則 各主体は、その役割、責務等に基づいてまちづくりに参加するものとする。

(3) 男女共同参画の原則 各主体は、男女が性別にかかわりなく、対等な立場で参加し、参画するまちづくりを推進するものとする。

(4) 協働の原則 各主体は、協働によるまちづくりを基本とし、その共通認識のもと自立した地域社会の推進を図るものとする。

第2章 各主体の権利及び責務

(市民の権利)

第6条 市民は、本市の豊かな自然、良好な生活環境のもと、安全で安心な生活を営む権利を有する。

2 市民は、市政に関する情報を知る権利を有する。

3 市民は、市の政策の立案、実施及び評価のそれぞれの過程に参画する権利を有する。

4 市民は、市が行う行政サービスを平等に享受できる権利を有する。

(市民の責務)

第7条 市民は、前条第2項及び第3項に規定する権利を有していることを認識し、主体的かつ積極的に市政運営に参加し、参画するものとする。

2 市民は、市政運営に参画するに当たっては、自らの発言と行動に責任を持つとともに、他の市民の意思及び意見を尊重するよう努めるものとする。

3 市民は、前条第4項に規定する権利を行使するに当たっては、それに伴う応分の負担を受け持つものとする。

(子どもの権利)

第8条 子ども(満18歳未満の市民をいう。以下同じ。)は、健全に成長する権利を有するとともに、自らの個性と能力に応じ、適切な指導及び教育を受ける権利を有する。

2 子どもは、自由に自己を表現し、意見を表明する権利を有するとともに、成長に応じて市政に参加する権利を有する。

(事業者の権利及び責務)

第9条 事業者は、第6条及び第7条に規定する権利及び責務を有するほか、地域社会を構成する一員としての社会的責任を認識し、環境及び市民生活に配慮した事業活動の推進、公益的な活動への積極的な参加等を行い、健全な地域社会づくりに寄与するものとする。

(議会の権限及び責務)

第10条 議会は、市の意思決定機関として、法令又は条例で定められた事項について議決する権限を有するとともに、市政運営に対する監視及びけん制する機能を有する。

2 議会は、市民の意思の把握に努め、それを市政に反映させるものとする。

3 議会は、会議の公開を原則とし、議会活動に関する情報を市民に分かりやすく提供することにより、開かれた議会運営に努めるものとする。

(議員の責務)

第11条 議員は、市民の代表者として、政治倫理の確立を図るとともに、公正かつ誠実に職務を遂行するものとする。

2 議員は、審議能力及び政策提案能力の向上に資するため、自己研さんに努めるものとする。

(市長の権限及び責務)

第12条 市長は、市を代表するとともに、市の事務を管理し、執行する権限を有する。

2 市長は、政治倫理の確立に努め、この条例に基づいた市政運営を誠実に行うとともに、自立した地域社会を実現するために必要な施策を総合的かつ計画的に講じるものとする。

3 市長は、市政運営に当たっては、常に経営感覚を持ち、費用の節減及び収入の確保に努めるとともに、事業運営及び財政の健全化を図るものとする。

4 市長は、リーダーシップを発揮し、職員を適切に指揮監督するとともに、効率的かつ効果的な組織運営を行うものとする。

5 市長は、組織運営に当たっては、市政の課題に的確に対応できる職員の育成に努めるとともに、職員の能力及び適性に応じた配置に努めるものとする。

6 市長は、本市の魅力や情報をあらゆる機会を通じて積極的に国内外へ発信するよう努めるものとする。

(職員の責務)

第13条 職員は、全体の奉仕者であることを自覚し、職務に係る倫理を保持するとともに、法令を遵守し、公正かつ誠実に職務を遂行するものとする。

2 職員は、行政執行の公正を妨げ、市政に対する市民の信頼を損なう行為(第32条において「是正対象行為」という。)により、公共の利益に反するおそれがある場合は、その事実を通報するものとする。

3 職員は、効率的な職務の遂行に必要な知識、技術等の能力の向上に資するため、自己研さんに努めるものとする。

(各主体の責務)

第14条 各主体は、第8条に規定する子どもの権利を尊重し、それを保障するとともに、それぞれの役割に応じてその環境づくり及び適切な支援に努めるものとする。

2 各主体は、本市の固有の地域資源(有形、無形に限らず、自然環境、歴史文化遺産その他の地域の個性を形成する要素をいう。)を保全するとともに、次の世代に引き継ぐよう努めるものとする。

第3章 まちづくりにおける基本的事項

第1節 情報共有

(情報の公開及び提供)

第15条 市は、市民の知る権利を保障し、公正かつ誠実に別に条例で定めるところにより、市政に関する情報を公開するものとする。

2 市は、広報紙、ホームページその他の媒体を活用し、市政に関する情報を市民に積極的に提供するものとする。

(個人情報の保護)

第16条 市は、保有する個人情報の開示、訂正、利用停止等を請求する権利を明らかにするとともに、個人の権利及び利益が不当に侵害されることがないよう、別に条例で定めるところにより、市が保有する個人情報の保護について必要な措置を講じるものとする。

(説明責任)

第17条 市は、市の政策の立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、その経過、内容、効果等について市民に適切な方法により説明するものとする。

第2節 参画

(市民参画制度)

第18条 市は、次条に定めるもののほか、市の政策の立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、別に条例で定めるところにより、適切かつ効果的な市民参画の制度及び機会を整備するよう努めるものとする。

(意見収集手続)

第19条 市は、まちづくりに関する計画の策定若しくは変更又は重要な政策等を決定しようとするときは、その施策等の検討過程における案をあらかじめ公表し、適切な方法により市民の意見を収集するとともに、その市民の意見を考慮するものとする。

(附属機関等)

第20条 市は、審議会、審査会その他の附属機関及びこれに類するもの(以下「附属機関等」という。)を組織し、又は運営するに当たっては、正当な理由がある場合を除き、公募による市民を構成員に含めるとともに、その構成員は、男女の均衡を図るよう努めるものとする。

2 附属機関等の会議は、公開を原則とする。

(男女共同参画)

第21条 市は、前条第1項に定めるもののほか、別に条例で定めるところにより、男女共同参画を総合的かつ計画的に推進するために必要な措置を講じるものとする。

第3節 協働

(協働の推進)

第22条 市は、公共的な課題の解決のため、市民、事業者その他の地域社会を構成する主体と協働の意義及び目的を共有するとともに、協働を共に推進していくための総合的な施策を整備するよう努めるものとする。

(地域コミュニティ)

第23条 市民は、住みよい地域社会をつくり、維持していくため、地域住民が自主的に参加し、その総意と協力により構成された基礎的な集まり(以下「地域コミュニティ」という。)を基本とし、様々な地域における課題の解決に向けて主体的に行動するものとする。

2 市は、地域コミュニティの自主性及び自立性を尊重するとともに、その活動を促進するために必要な措置を講じるものとする。

(市民公益活動)

第24条 市は、社会一般の利益に資する自発的、自主的及び継続的に行う非営利活動(以下「市民公益活動」という。)を尊重するとともに、その活動を促進するための適切な措置を講じるものとする。

2 市民公益活動を行う法人その他の団体は、協働によるまちづくりの重要な担い手としての認識のもと、その活動が広く市民から理解されるよう努めるものとする。

3 市民及び事業者は、市民公益活動の意義を理解し、市民主体の自治の実現のため、必要な協力又は支援に努めるものとする。

第4章 住民投票

(住民投票)

第25条 市長は、市政に係る重要事項について、直接、住民(市内に住所を有する満18歳以上の者(定住外国人を含む。)をいう。次条において同じ。)の意思を確認するため、住民投票を実施することができる。

2 議会及び市は、住民投票の結果を尊重するものとする。

(住民投票の実施要件)

第26条 住民は、市政に係る重要事項について、その総数の6分の1以上の者の連署をもって、その代表者から市長に対して住民投票の実施を請求することができる。

2 議会は、市政に係る重要事項について、議員の定数の12分の1以上の者の賛成を得て議員提案され、かつ、出席議員の過半数の賛成により議決されたときは、市長に対して住民投票の実施を請求することができる。

3 市長は、市政に係る重要事項について、自らの意思により住民投票を実施することができる。

4 市長は、第1項又は第2項の規定による請求があったときは、住民投票を実施するものとする。

5 前各項に定めるもののほか、住民投票の実施に関し必要な事項は、別に条例で定める。

第5章 市政運営

(総合計画)

第27条 市は、総合的かつ計画的な市政運営を行うための基本構想及びこれを実現するための基本計画(以下「総合計画」という。)を、本市における自治の基本理念にのっとり策定するものとする。

2 市は、総合計画の進行管理を適切に行うとともに、必要に応じて見直しを行うものとする。

3 市は、行政分野ごとの計画又は政策の立案、実施等は、総合計画に即して行うものとする。

(行政評価)

第28条 市は、効果的かつ効率的な市政運営を行うため、施策等の成果及び達成度を明らかにする行政評価を実施するとともに、その結果を公表するものとする。

(財政運営)

第29条 市は、最少の経費で最大の効果を挙げる財政運営を行うよう努めるものとする。

2 市は、中長期的な展望に立ち、総合計画及び行政評価の結果を踏まえて、予算を編成し、執行するとともに、財源及び財産の適正かつ効果的な活用を図るものとする。

3 市は、財政状況に係る情報並びに予算の編成及び執行に係る情報を公表することにより、財政運営の透明性の確保に努めるものとする。

(申立てへの対応)

第30条 市は、市政に関しての意見、要望、苦情等の申立てがなされたときは、その事実関係を調査し、迅速かつ誠実にそれに応じるものとする。

(行政手続)

第31条 市は、市民の権利及び利益の保護に努めるとともに、市政運営の公正の確保及び透明性の向上を図るため、別に条例で定めるところにより、市が行う処分、指導、届出等の手続に関し必要な事項を明らかにするものとする。

(公益通報)

第32条 市は、公益通報(是正対象行為について職員等から行われる通報をいう。)を受ける体制を整備するとともに、当該通報者が通報により不利益な取扱いを受けることのないよう適切な措置を講じるものとする。

(政策法務)

第33条 市は、市の政策を推進するため、法令等の自主的かつ適正な解釈及び運用のもと、関係法令等との整合性を図りながら、条例、規則等の制定、改廃等必要な措置を講じるものとする。

(危機管理)

第34条 市は、市民及び事業者並びに国、県その他の関係機関との協力、連携及び相互支援関係を構築し、災害等の緊急時における柔軟かつ機動的な危機管理体制を確立するよう努めるものとする。

第6章 広域的な連携及び交流

(広域的な連携及び交流)

第35条 市は、共通する課題又は広域的な課題の解決を図るため、国、県及び関係市町村と相互に連携し、協力するよう努めるものとする。

2 各主体は、姉妹都市その他の国内外の自治体、組織等と連携し、交流し、協力することにより、得られる情報、知識及び経験をまちづくりに反映させるよう努めるものとする。

第7章 雑則

(履行状況等の検証)

第36条 市は、毎年度、この条例の市政運営に係る規定の履行状況について検証し、適切な方法により公表するものとする。

(条例の見直し)

第37条 市は、5年を超えない期間ごとにこの条例を検証し、必要に応じて条例の改正その他の措置を講じるものとする。

(委任)

第38条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、公布の日から1年を超えない範囲内において規則で定める日(平成21年10月1日)から施行する。

(令和元年9月11日条例第14号)

(施行期日)

1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。ただし、第3条中奥州市行政手続条例第2条第6号の改正規定(「、若しくは」を「若しくは」に改める部分に限る。)、第7条中奥州市汚水処理施設条例第3条第6号の改正規定、第8条中奥州市営浄化槽条例第2条第5号の改正規定、第12条中奥州市農業集落排水施設条例別表第3の改正規定、第13条中奥州市農業集落排水事業分担金条例第9条の改正規定(「、又は」を「又は」に改める部分に限る。)及び第14条中奥州市都市下水路条例第20条第6号の改正規定は、公布の日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行前に市長が行った処分、手続その他の行為又は市長に対して行われた手続その他の行為で、この条例の施行の日以後上下水道事業管理者の権限を行う市長が管理し、及び執行することとなる事務に係るものは、上下水道事業管理者の権限を行う市長が行った処分、手続その他の行為又は上下水道事業管理者の権限を行う市長に対して行われた手続その他の行為とみなす。

奥州市自治基本条例

平成21年3月13日 条例第1号

(令和2年4月1日施行)

体系情報
第1編 規/第1章
沿革情報
平成21年3月13日 条例第1号
令和元年9月11日 条例第14号