○奥州市子どもの権利に関する条例

平成24年1月6日

条例第1号

目次

第1章 総則(第1条・第2条)

第2章 一人の人間として持っている子どもの権利(第3条―第8条)

第3章 子どもの権利を保障する責務(第9条―第14条)

第4章 子どもに関する基本的な市の取組(第15条―第20条)

第5章 奥州市子どもの権利推進委員会(第21条―第24条)

第6章 委任(第25条)

附則

子どもは、奥州市の宝であり、希望です。

人は、だれでも生まれながらにして幸せに生きる権利を持っています。

しかし、世界では、貧困、飢え、虐待等の困難な状況に置かれている子どもがたくさんいます。このような子どもたちを救うため、国際連合では児童の権利に関する条約が採択されました。

我が国においてもこの条約を批准していますが、いじめ、体罰、虐待、子どもが当事者となる事件の多発、不登校、核家族化等子どもを取り巻く環境は、ますます複雑になってきています。

このことは、奥州市においても例外ではなく、行政、家庭、地域、企業が連携し、社会全体で子どもたちを支援する体制づくりが必要です。

子どもの皆さん

皆さんは、自分で判断することができ、みんなとともに生きることができるやさしい心と強さを持ち、自分を大切にする中で、他の人を思いやり、お互いを尊重し合える力をつけていくことが大事です。

私たちは、全ての子どもが、自分の持てる力を発揮して、いきいきと自分の可能性を追求し、幸せな人生を送ることができるよう、子どもの権利を保障し、支援するまちづくりに取り組むため、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、全ての子どもがいきいきと輝き、伸びやかにたくましく育ち、幸せな人生を送るため、子どもの権利を保障することを目的とします。

(定義)

第2条 この条例において、「子ども」とは、満18歳未満の者をいいます。

2 この条例において、「子どもが育ち・学ぶ施設」とは、子どもが育つために利用する全ての施設をいいます。

第2章 一人の人間として持っている子どもの権利

(子どもの権利の保障)

第3条 この章に規定する権利は、子どもが人間として持っている特に大切な権利(以下「子どもの権利」という。)として保障されなければなりません。

(安全に安心して生きる権利)

第4条 子どもは、安全に、かつ、安心して生きるための権利として、主に次に掲げることが保障されます。

(1) 命が大切にされること。

(2) 愛情を持って育まれること。

(3) あらゆる差別を受けないこと。

(4) 虐待、暴力、いじめ等を受けないこと。

(5) 健康に配慮され、適切な医療の提供が受けられること。

(6) 性的に不当な扱いを受けないこと。

(のびのびとこころ豊かに育つ権利)

第5条 子どもは、のびのびとこころ豊かに育つための権利として、主に次に掲げることが保障されます。

(1) 個性が認められ、人格が尊重されること。

(2) 遊んだり、休んだり、のびのびと育つこと。

(3) 学ぶこと。

(4) さまざまな人との関わりや自然とのふれあいの中で、共に生きること。

(5) 自分に関することを主体的に決めること。

(6) 基本的生活習慣及び社会性を身につけること。

(自分を守り、自分が守られる権利)

第6条 子どもは、自分を守り、自分が守られるための権利として、主に次に掲げることが保障されます。

(1) 自分の夢や希望を自由に持ち、表明し、行動すること。

(2) 自分の持っている力を発揮すること。

(3) プライバシー及び名誉が守られること。

(4) 信頼され、自分の意思や考えが尊重されること。

(意見を述べ、参加する権利)

第7条 子どもは、自分たちに関わることについて意見を述べ、参加するための権利として、その年齢及び発達に応じ、主に次に掲げることが保障されます。

(1) 自分の意見を表すことができ、その意見が尊重されること。

(2) 自分たちに関わることを決めることについて、自分たちの意見が反映されること。

(3) 意見を表すために、必要な情報の提供及び支援が受けられること。

(4) 仲間をつくり、仲間と集うこと。

(適切な支援を受ける権利)

第8条 子どもは、国籍の違い、障がいの有無等にかかわらず、必要に応じて適切な支援を受ける権利が保障されます。

第3章 子どもの権利を保障する責務

(共通の責務)

第9条 保護者、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、地域住民、事業者及び市は、子どもの権利を保障するため、相互に連携し、協働するとともに、次に掲げる支援を行うよう努めなければなりません。

(1) 子どもが他の人の権利を尊重し、責任ある社会の一員として育つために必要なこと。

(2) 保護者が子どもの養育及び発達に関する一義的な責任を果たすために必要なこと。

(3) 子どもの良さを見つけてほめることで、子どもが自信及び誇りを持ち、自分を見つめ、生きる力を養うために必要なこと。

(4) 特別に支援が必要な子どもに配慮し、その子どもが持っている力を発揮するために必要なこと。

(保護者の責務)

第10条 保護者は、子どもの健やかな成長及び権利の保障にとって家庭が果たす役割を認識するとともに、その一義的な責任を有することを自覚し、子どもを守り育てなければなりません。

2 保護者は、子どもに愛情を持って接し、子どもを虐待せず、子どもが基本的な生活習慣、社会規範及び道徳観を身に付けることができるよう努めなければなりません。

3 保護者は、子どもと共に育ち合う中で、子どもが自ら学び、自ら考え、自らを変えていく力など、育つ力を蓄え、発揮していくことができるよう努めなければなりません。

(子どもが育ち・学ぶ施設の関係者の責務)

第11条 子どもが育ち・学ぶ施設の関係者は、子どもが主体的に育ち、学ぶことができるよう、次に掲げる環境を整備するよう努めなければなりません。

(1) 子どもを権利の主体としてとらえ、子どもの立場に立った子どもが育ち・学ぶ施設の運営を図ること。

(2) 虐待、体罰、いじめ等の防止のために、必要な措置を講じるとともに、子どもに関わる関係機関等との連携を図ること。

(3) 子どもが育ち・学ぶ施設の運営について、子どもに適切な情報を提供し、子どもの意見を聴くこと。

(4) 子どもの個性を尊重し、一人ひとりに応じた保育、教育等を行うとともに、必要とする情報を子どもに提供すること。

(5) 豊かな人間性及び社会性をはじめ、生きる力を子どもの心身の発達段階に応じて育んでいくこと。

(地域住民の責務)

第12条 地域住民は、地域のさまざまな人、自然及び文化との関わりの中で、子どもの豊かな人間性が育まれることを認識し、子どもが健やかに育つよう、子どもの支援に努めなければなりません。

2 地域住民は、虐待、暴力、犯罪等から子どもを守るため、安全で安心な地域づくりに努めなければなりません。

3 地域住民は、子どもが地域社会の一員として、自主的かつ主体的に活動できるよう、必要な支援に努めなければなりません。

(事業者の責務)

第13条 事業者は、子どもの健やかな育ちを支援するため、その社会的影響力及び責任を認識した事業活動を行うとともに、社会的自立に向けた就労支援、人材育成及び社会人教育を行うよう努めなければなりません。

2 事業者は、子育て期の従業員が仕事と子育てを両立できるよう、職場づくりに努めなければなりません。

3 事業者は、子育て期の従業員がその子どもと十分触れ合うことができる環境づくりに配慮するとともに、学校等が行う職場体験活動など、子どもの育成に関する活動に協力するよう努めなければなりません。

(市の責務)

第14条 市は、子どもの権利を保障するため、子どもにとっての最善の方法を考え、子どもに関する取組を推進しなければなりません。

2 市は、子どもの権利を保障し、子どもを支援するため、保護者、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、地域住民及び事業者がそれぞれの責務を全うするよう、保健、福祉、医療、教育その他のあらゆる分野において、必要な支援及び総合調整を図らなければなりません。

3 市は、国、県及び子どもに関わる関係機関と相互に連携し、協働しなければなりません。

4 市は、子どもに関する取組を実施するため、財政上の措置その他必要な措置を講じなければなりません。

第4章 子どもに関する基本的な市の取組

(子どもの権利の普及)

第15条 市は、この条例及び子どもの権利について、市民の関心及び理解を深めるため、分かりやすく広めるなど、広報活動を行います。

(虐待、体罰、いじめ等の防止のために必要な措置)

第16条 市は、保護者、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、地域住民及び子どもに関わる関係機関と連携し、虐待、体罰、いじめ等の防止のために必要な措置を講じます。

(子どもの育ちの支援)

第17条 市は、子どもの健やかな育ちを支援するため、保護者、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、地域住民及び事業者と連携及び協働をし、次に掲げる取組を行うよう努めます。

(1) 子どもが健康で安全に、かつ、安心して過ごすことができる環境づくりを進めること。

(2) 子どもが自然及び地域社会とのふれあいの中で、こころ豊かに育つことができるための遊び及び体験の場づくりを進めること。

(3) 子どもが社会に認められ、他の人と共生し、責任ある社会の一員として自立できるよう支援すること。

(子どもの参画活動の促進)

第18条 市は、子どもの主体性を大切にしながら、社会参加等の促進が図られるよう必要な支援を行います。

(子育て家庭の支援)

第19条 市は、保護者が子育てするに当たり、必要に応じて経済的及び社会的支援を行うとともに、保護者、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、地域住民及び事業者と連携及び協働をし、支援体制の充実に努めます。

2 市は、子育てに関して困難を抱えている家庭の把握に努めるとともに、その状況に配慮した支援を行います。

(推進計画の策定等)

第20条 市は、この条例を総合的かつ計画的に推進するため、次に掲げる取組を行うための推進計画を策定します。

(1) 子どもの権利に関する情報の発信及び啓発

(2) 子どもの権利に関する学習の機会の確保

(3) 子どもの置かれている現状を把握するための取組

(4) 前3号に掲げるもののほか、子どもの権利を保障するための取組

2 市は、推進計画を策定しようとするときは、子どもを含めた市民から意見等を求め、その反映に努めます。

3 市は、推進計画を策定したときは、公表します。

第5章 奥州市子どもの権利推進委員会

(設置等)

第21条 前条に規定する推進計画について調査及び審議を行うため、奥州市子どもの権利推進委員会(以下「委員会」という。)を設置します。

2 委員会は、前項に定めるもののほか、この条例の推進に関し必要な事項について、市長に対し意見を述べることができます。

(委員)

第22条 委員会は、委員15人以内をもって組織し、委員は、人権、福祉、教育等の子どもに関わる分野において学識経験を有する者、公募による者及び中学生以上の子どもを含む市民のうちから市長が委嘱します。

2 委員の任期は、2年以内とし、再任を妨げません。ただし、委員が欠けた場合の後任の委員の任期は、前任者の残任期間とします。

(会長)

第23条 委員会に会長を置き、委員の互選とします。

2 会長は、会務を総理し、会議の議長となります。

(会議)

第24条 委員会は、市長が招集します。

2 委員会の会議は、委員の半数以上が出席しなければ開くことはできません。

3 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによります。

第6章 委任

第25条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。

この条例は、平成24年4月1日から施行します。

奥州市子どもの権利に関する条例

平成24年1月6日 条例第1号

(平成24年4月1日施行)

体系情報
第3編 行政通則/第6章 地域振興
沿革情報
平成24年1月6日 条例第1号