○おうしゅう地産地消わくわく条例

平成30年1月4日

条例第1号

目次

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 地産地消の推進(第8条―第10条)

第3章 食の安全安心の確保(第11条―第13条)

第4章 食育の推進(第14条―第16条)

第5章 地元酒等による乾杯の推進(第17条―第19条)

第6章 推進体制(第20条―第22条)

第7章 雑則(第23条―第25条)

附則

奥州市では、恵まれた自然条件を生かし、水稲を主体とした畜産、果樹、野菜、花き等の複合型の農業経営による生産性の高い農業の展開と、これを基盤とした快適な農村社会の実現を目指し、絶え間ない努力を続けてきている。その結果、市内で生産された農産物、畜産物、林産物等は、その高い品質により、全国的にも高い評価を得ているところである。

一方、この地では、豊穣な大地と歴史ある伝統文化に支えられ、古くから農村社会を基盤として優れた食文化が花開き、代々市民に受け継がれてきた。

しかしながら、近年の農業を巡る激しい経営環境の変化、農業を担う者の減少、少子化及び高齢化、さらには、国民的な食品の安全性や信頼性への関心の高まりなどを背景として、食と農を巡り、様々な課題が浮き彫りになってきている。こうした状況を踏まえるとき、私たちは、地域の基幹産業である農業とそれを基礎としてこれまで育んできた伝統ある食文化を継承するとともに、市民が安全安心な食生活を享受できるよう、地域から新たな一歩を力強く踏み出さなければならない。

このようなことから、市民一人ひとりが、農業及び農村の果たしている役割と、それぞれの食生活の重要性について再認識し、生産者、事業者、市民、市等の協働により、地産地消を推進し、農業の振興と食の安全安心を基盤とした食文化の継承を図っていくことが必要である。

ここに私たちは、魅力ある可能性の大地、この奥州で、食と農のすばらしさを永く将来にわたって維持し、発展させることにより、市民がわくわくするような、健康で文化的な地域社会を共に築いていくことを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、奥州市における地産地消を推進するための基本理念並びに市、生産者、事業者及び市民の役割を明らかにするとともに、地産地消を通じ、農産物等に係る食の安全安心を確保し、食育、朝食の大切さ及び地元酒等による乾杯を推進し、及び推進体制を構築することにより、奥州市における農業の振興及び健全な食文化の継承を図り、食と農を基本とした健康で文化的な地域社会の形成に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 農産物等 市内で生産された農産物、畜産物、林産物をいう。

(2) 地元食材 市内で産出し、又は採取した食品及びそれを加工した食品をいう。

(3) 地元酒等 市内で製造され、又は市内で生産された農産物等を原材料とする清酒、焼酎、果実酒その他の酒類及びジュースその他の清涼飲料水をいう。

(4) 地産地消 市内で生産される農産物等及び地元食材を市内で消費することをいう。

(5) 食の安全安心 市民が健全な食生活を営むための食品の安全性及び信頼性をいう。

(基本理念)

第3条 地産地消に関する施策の推進は、次に掲げる基本理念に基づいて推進するものとする。

(1) 生産者、消費者及び事業者の信頼関係を構築しながら、市民が地元食材を愛用することにより、食を楽しみ、及びそのことにより生産者が農業に対する自信と誇りを持つことができるよう、地域や市民を「元気」にするために行われなければならない。

(2) 安全で安心な農産物等を生産するための農地、農業の担い手及び農業技術を確保し、並びに育成し、市内における食料自給率の向上及び食の安全安心が確保された高品質な農産物等の安定供給を確立することにより、地域の農業を活性化させるために行われなければならない。

(3) 市が施策として取り組むもののほか、市内に居住し、食生活を享受する市民の間での自発的な取組を尊重するよう行われなければならない。

(4) 市民が、市内で生産された農産物等を通じて、より地域の魅力を知り、安全安心な農産物等を育む豊かな地域の環境、自然及び農業の重要性を考え、ふるさとを大切にする気運を醸成するよう行われなければならない。

(5) 食育の重要性が市民一人ひとりに理解され、地域の優れた食文化が家庭及び地域において継承されるように行われなければならない。

(市の役割)

第4条 市は、前条の基本理念に基づき、生産者、事業者及び市民と連携して地産地消の推進に関する施策を実施するものとする。

(生産者の役割)

第5条 生産者は、食の安全安心に関する関係法令及び条例を遵守するとともに、生産する農産物等が市民の健康を支えていることを自覚し、自主的に農産物等の安全性の確保に取り組むものとする。

2 生産者は、生産する農産物等に関する正確かつ適切な情報を消費者に対して提供するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、その事業活動が地域の振興に密接な関連を有することを自覚するとともに、生産者及び市民と連携して地産地消の推進に取り組み、市が実施する地産地消の推進に関する施策に協力するものとする。

(市民の役割)

第7条 市民は、食の安全安心及び食を支える生産者等の取組を理解し、地元食材の愛用に努め、自発的に地産地消の推進に取り組むものとする。

第2章 地産地消の推進

(地産地消の推進)

第8条 市は、地産地消を促進し、市民が食の安全安心が確保された農産物等を購入できるよう、必要な施策を講ずるものとする。

(市の地元食材の率先利用)

第9条 市は、事業を実施するに当たり、食品を購入し、又は利用する場合は、地元食材を優先的に購入し、又は利用するよう努めるものとする。

2 市は、市の給食施設(学校給食に限る。)における食品の購入状況を公表するものとする。

3 市は、地元食材の利用が促進されるよう、周知に努め、必要に応じ、地元食材の利用の促進を図るものとする。

(おうしゅうまるかじりの日)

第10条 市は、市民が第3条に規定する基本理念について考え、自ら行動する日として「おうしゅうまるかじりの日」を定め、地元食材の使用の促進を図るものとする。

2 前項に規定する「おうしゅうまるかじりの日」は、毎月第4土曜日とする。

第3章 食の安全安心の確保

(食の安全安心が確保された農産物等の供給の促進)

第11条 市は、生産者と連携して、食の安全安心が確保された農産物等の安定した供給を促進するため、適切な措置を講ずるものとする。

(生産者等の食品トレーサビリティの導入への取組)

第12条 生産者及び農産物等を販売する事業者は、消費者が食の安全安心が確保された農産物等を購入することができるよう、積極的に食品トレーサビリティ(生産、加工、流通及び販売の段階で、食品の仕入先、販売先等の記録を取り、及び保管し、並びに識別番号等を用いて食品との結び付きを確保することにより、食品及びその流通した経路、所在等を記録した情報の追跡及び遡及を行うことができる仕組みをいう。)の導入に努めるものとする。

(農業生産工程管理の推進)

第13条 市は、農業生産工程管理(農業において、食品の安全性、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程を管理する取組をいう。)を推進し、品質の向上、農業経営の改善及び効率化に資するとともに、生産者及び消費者の信頼が確保されるよう、必要な施策を講ずるものとする。

第4章 食育の推進

(食育の推進)

第14条 市は、市民が地域の食文化及び食の安全安心に関する知識及び理解を深め、市民及び事業者との相互理解を促進するため、食育に関する普及活動の推進及び学習機会の提供を図るものとする。

2 市は、前項に規定する施策の推進に当たっては、幼少期から朝食を食べる健全な食習慣を維持し、安全性の高い食品を自ら選び、食することができる力を身に付けることができるよう、地域、学校、家庭等が連携して行う学習、体験活動等を推進するものとする。

3 市は、大切な食料資源を無駄なく有効活用するため、食品廃棄物の再生利用及び食品ロス(食べられる状態であるにもかかわらず廃棄される食品をいう。)の削減等に関する普及活動の推進を図るものとする。

(学校における食育の推進)

第15条 市は、市立学校において食育の推進に関する活動を効果的に促進することにより、子どもの健全な食生活の実現及び心身の成長が図られるよう、食育に関する指導体制の整備、地域の特色を生かした学校給食等の実施等、食に関する理解の促進等についての知識の啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

(食文化継承のための支援)

第16条 市は、伝統的な行事、作法と結びついた食文化その他の地域の特色ある食文化の継承を推進するため、これらに関する啓発、知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

第5章 地元酒等による乾杯の推進

(地元酒等による乾杯の推進)

第17条 市は、地元酒等の普及促進を図り、もって地域経済の発展に寄与するため、地元酒等による乾杯を推進するものとする。

(市の役割及び市民の協力)

第18条 市は、前条に規定する施策の推進に当たっては、市民及び地元酒等を製造し、販売し、又は提供する事業者(以下「製造販売事業者」という。)と連携し、地元酒等による乾杯を推進するため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 市民は、地元酒等による乾杯の推進が地域経済の発展に寄与することを理解し、地元酒等を乾杯に用いるよう努めるものとする。

(個人の嗜好及び意思の尊重)

第19条 市、製造販売事業者及び市民は、地元酒等による乾杯の推進に当たっては、個人の嗜好及び意思を尊重しなければならない。

第6章 推進体制

(おうしゅう地産地消推進計画の策定)

第20条 市は、地産地消の推進のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、おうしゅう地産地消推進計画(以下「推進計画」という。)を策定する。

(おうしゅう地産地消推進会議の設置)

第21条 市は、第3条に規定する基本理念の実現に資するため、おうしゅう地産地消推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。

2 推進会議は、次に掲げる事項について審議する。

(1) 地産地消の推進に関する事項

(2) 食の安全安心に関する事項

(3) 食育の推進に関する事項

(4) 地元酒等による乾杯の推進に関する事項

(5) 前各号に掲げる事項のほか、この条例の実施に関する事項

3 推進会議は、市、議員、生産者、事業者及び学識経験者のうちから市長が任命する。

4 前3項に規定するもののほか、推進会議の運営に関し必要な事項は、別に定める。

(地産地消に関する施策に対する市民の意見聴取)

第22条 市は、推進計画の策定その他の地産地消の推進に関する重要事項を決定するに当たっては、市民からの意見又は要望を聴取し、その概要及びこれに係る対応について推進会議の意見を聴取したうえで、それを公表するものとする。

2 市は、前項の規定による推進会議からの意見について、最大限尊重するものとする。

第7章 雑則

(普及啓発)

第23条 市は、地産地消の推進に関し、市民に広く普及啓発をするものとする。

(財政支援)

第24条 市は、この条例の目的を達成するため、必要な財政上の支援に努めるものとする。

(補則)

第25条 この条例に定めるもののほか、この条例の実施に関し必要な事項は、別に定める。

この条例は、平成30年4月1日から施行する。

おうしゅう地産地消わくわく条例

平成30年1月4日 条例第1号

(平成30年4月1日施行)

体系情報
第9編 業/第2章 業/第2節
沿革情報
平成30年1月4日 条例第1号