○奥州市環境基本条例

平成19年3月14日

条例第3号

目次

第1章 総則(第1条―第4条)

第2章 各主体の責務(第5条―第8条)

第3章 環境施策の基本となる事項

第1節 基本施策(第9条)

第2節 環境基本計画(第10条―第12条)

第3節 推進施策(第13条―第21条)

第4節 推進及び調整の体制(第22条―第24条)

第4章 雑則(第25条)

附則

私たちのまち奥州市は、中央に北上川が流れ、その両岸に肥沃な耕地が広がり、豊かな水と緑に恵まれ、古くから水陸万頃の地と称されてきました。また、東に北上高地がなだらかに広がり、西に焼石岳を抱く奥羽山脈がそびえ、面的な広がりと同時に標高差を持つ変化に富んだ自然環境に恵まれています。歴史的には、旧石器の時代から住みよい土地として栄え、古墳や遺跡も数多く、平安時代には奥州平泉の礎を築いた藤原清衡が生まれる等奥州の中心としての役割を果たしてきました。

こうした豊かな自然と共生しながら米、牛、りんご、野菜等の高品質な農畜産物を生産し、また、自然の恵みを受けて秀衡塗、岩谷堂箪笥、南部鉄器等の伝統工芸品を生み出してきました。近年では、工業団地を中心とする企業の立地により、様々な工業製品の生産と出荷が活発になってきています。

一方、社会全体が利便性の追求による大量生産・大量消費・大量廃棄型となったことにより、家庭や事業所から排出されるごみの問題、廃棄物の不法投棄等が大きな社会問題となっています。さらには、多種多様な化学物質による汚染や酸性雨、オゾン層の破壊、地球温暖化による様々な災害等の発生といった地球規模の環境問題により私たちの生活は脅かされています。

私たち奥州市民は、これらの問題を解決するため、市民一人ひとりが自ら環境に与える影響を理解し、その負荷を低減する行動を取らなければなりません。また、全ての事業者は、省資源及び省エネルギーの推進等により環境に配慮する生産活動に努めることが求められます。

それぞれの地域の特色を活かしつつ、土と水と空気をいつまでも健全に保つことにより、この奥州の地が将来にわたって住みよい環境であり続け、かつ、活発な農業・工業の生産活動や商業活動が促進されるよう、理想的な循環型社会の形成を目標に掲げます。

ここに、私たち奥州市民は、市内全ての事業者・市と協働して環境問題に取り組むため、奥州市環境基本条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、持続可能な社会を構築し、並びに恵み豊かな環境を将来にわたって良好に保全し、及び創出していくことについて、基本となる考え方(以下「基本理念」という。)及び基本的な決まり(以下「基本原則」という。)を定め、市民、市民団体、事業者(以下「市民等」という。)及び市の責務を明らかにするとともに、市が行う環境の保全等に関する施策(以下「環境施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、環境に配慮した奥州市のまちづくりを総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 環境の保全等 奥州市の恵み豊かな環境を将来にわたって良好に保全し、及び創出していくことをいう。

(2) 市民団体 公益の増進に寄与することを目的とし、主として市民及び事業者により組織された自治組織、ボランティア団体等をいう。

(3) 環境への負荷 環境基本法(平成5年法律第91号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する環境への負荷をいう。

(4) 新エネルギー利用等 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(平成9年法律第37号)第2条に規定する新エネルギー利用等をいう。

(5) 環境教育 環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号。以下「環境教育等促進法」という。)第2条第3項に規定する環境教育をいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全等は、次に掲げる事項が実現されるよう行われなければならない。

(1) 市民が有する環境の恵みを享受する権利の実現と、これを将来の世代へ引き継ぐこと。

(2) 自然の生態系を尊重し、人と自然が健全に共生していくこと。

(3) 限りある資源の適正利用及び循環の徹底により、環境への負荷の少ない持続可能な循環型社会を構築すること。

(4) 地球温暖化をはじめとする様々な問題を抱え、深刻な状況にある地球環境を保全すること。

2 市は、各種施策を実施しようとするときは、環境を優先するよう努めなければならない。

(基本原則)

第4条 環境の保全等は、環境に関する情報を市民等及び市が共有することを基本に進められなければならない(情報共有の原則)

2 環境の保全等は、全ての者が協働して、公平な役割分担の下に主体的かつ積極的に取り組むことにより行われなければならない(協働の原則)

3 市は、環境施策の企画、実施、評価、見直し等において、市民等に対しわかりやすく説明するよう努めなければならない(説明責任の原則)

4 市は、環境施策の企画、実施、評価、見直し等において、市民等が参加する機会を確保しなければならない(市民参加の原則)

5 市は、環境の保全等に深刻な影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、予防の措置について検討するよう努めなければならない(予防の原則)

第2章 各主体の責務

(市民の責務)

第5条 市民は、基本理念及び基本原則に従い、資源、エネルギー等の使用及び廃棄物の排出等自らの日常生活に伴い生じる環境への負荷を低減するよう努めるとともに、環境施策に積極的に参画し、及び協力しなければならない。

(市民団体の責務)

第6条 市民団体は、基本理念及び基本原則に従い、自らの活動に伴い生じる環境への負荷を低減するよう努めるとともに、環境施策に積極的に参画し、及び協力しなければならない。

2 市民団体は、自らが行う環境の保全等に係る活動を円滑に進めるため、市民等の参加の機会を充実し、組織の体制を整備し、及び情報を提供するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第7条 事業者は、自らの事業活動が環境に大きな影響を与えていることを認識し、基本理念及び基本原則に従い、自らの事業活動に伴い生じる環境への負荷を低減するよう努めるとともに、環境施策に積極的に参画し、及び協力しなければならない。

(市の責務)

第8条 市は、基本理念及び基本原則に従い、基本的かつ総合的な環境施策を策定し、実施し、及び評価し、並びに必要に応じて当該施策を見直さなければならない。

第3章 環境施策の基本となる事項

第1節 基本施策

(基本施策)

第9条 市は、基本理念の実現を図るため、次に掲げる環境施策を推進するものとする。

(1) 奥羽山脈、北上高地等に存する森林、身近な里山、北上川等の河川その他の豊かで貴重な自然環境を保全すること。

(2) 廃棄物の発生抑制、再使用及び再生利用の促進等により減量化を図るとともに、廃棄物の適正処理を推進すること。

(3) 監視体制の整備等による不法投棄の未然防止及び原状回復を推進すること。

(4) 新エネルギー利用等の促進並びに省資源及び省エネルギーの推進等により温室効果ガスの発生を抑制し、地球温暖化を防止すること。

(5) 騒音、振動、悪臭、生活排水その他の生活環境に係る問題へ適切な対策を講じるとともに、これらの監視測定体制を整備すること。

(6) 奥州市に源を有する胆沢川等の清流の水質を保持する等健全な水環境を保全すること。

(7) 市街地、農用地等の土壌汚染を防止し、その安全性を確保すること。

(8) 化学物質による人の健康や生態系への影響を未然に防止するため、適切な対策を講じること。

(9) 市民等と連携を図り、学校、地域、野外活動等多様な場において、環境教育を総合的に推進すること。

(10) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める環境施策

第2節 環境基本計画

(環境基本計画)

第10条 市長は、環境施策を総合的かつ計画的に推進するため、奥州市環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 環境基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 目指すべき環境像

(2) 環境要素ごとの目標(以下「環境目標」という。)

(3) 環境目標の達成度合を計る環境指標

(4) 環境像及び環境目標を実現するため市が取り組むべき環境施策

(5) 日常生活又は事業活動の中で市民等が留意すべき環境配慮事項

(6) 地域特性に則した環境配慮指針

(7) 前各号に掲げるもののほか、環境の保全等に関する必要な事項

3 市長は、環境基本計画を策定しようとするときは、市民等の意見を反映することができるよう必要な措置を講じるとともに、第22条に規定する審議会の意見を聴かなければならない。

4 市長は、環境基本計画を策定したときは、遅滞なく公表しなければならない。

5 前2項の規定は、環境基本計画の見直しを行う場合に準用する。

(環境基本計画の進行管理)

第11条 市長は、環境基本計画に掲げる各種施策の実施状況及び環境指標の達成状況を把握し、並びに評価するとともに、これらを取りまとめた報告書を毎年度作成し、公表しなければならない。この場合において、当該報告書には、第22条に規定する審議会(第23条第1項の規定により市長が市民会議を指定した場合にあっては、第22条に規定する審議会及び第23条に規定する市民会議)の意見を付すものとする。

(環境基本計画との整合)

第12条 市長は、各種施策を策定し、又は実施しようとするときは、環境基本計画との整合を図るよう努めなければならない。

第3節 推進施策

(財政上の措置)

第13条 市長は、環境施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるよう努めるものとする。

(事前調査及び対策)

第14条 市長は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行おうとするものに対し、当該事業が及ぼす影響を調査させ、その結果に基づき当該事業が環境に配慮されたものとなるよう必要な対策を講じるものとする。

(規制の措置)

第15条 市長は、環境の保全等について、支障となる行為を防止するため、必要な規制の措置を講じるよう努めるものとする。

(環境教育の推進)

第16条 市長は、環境教育等促進法の趣旨に従い、市民等の環境問題に対する理解と認識を深めるため、環境教育を推進するよう努めるものとする。

(自発的な活動の促進)

第17条 市長は、市民等が自発的に行う緑化、環境美化、資源回収その他の環境の保全等に関する活動を促進するため、必要な施策を講じるよう努めるものとする。

(環境情報の収集及び提供)

第18条 市長は、環境情報を収集し、及び市民等へ適切に提供するよう努めるものとする。

(調査の実施)

第19条 市長は、環境の状況の把握及び環境施策の策定に必要な調査を実施するものとする。

(提言の受付)

第20条 市長は、市民等からの環境施策に関する提言を受けるよう努めるものとする。

2 前項の提言は、書面により行わなければならない。

3 市長は、提言を受理したときは、必要に応じて第22条に規定する審議会の意見を聴く等その内容を検討し、速やかに当該提言に対し書面により回答するものとする。

(国等との協力)

第21条 市は、広域的な取組を必要とする環境保全に関する施策については、国又は他の地方公共団体と協力して推進するよう努めるものとする。

第4節 推進及び調整の体制

(奥州市環境審議会)

第22条 環境の保全等に関する基本的事項を調査審議させるため、法第44条の規定に基づき、市長の附属機関として奥州市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、環境の保全等に関する重要事項について、市長に意見を述べることができる。

3 審議会は、委員15人以内をもって組織し、規則で定める者のうちから市長が委嘱する。

4 審議会の組織、運営その他必要な事項は、規則で定める。

(奥州市環境市民会議)

第23条 市長は、市民等及び市が協働して環境の保全等を推進するに当たり必要と認めるときは、市との協働により環境基本計画の進行管理を行う市民団体として適当と認めるものを奥州市環境市民会議(以下「市民会議」という。)として指定するものとする。

2 市民会議は、環境の保全その他の環境施策に関しての提言その他市長に意見を述べることができる。

3 市長は、市民会議に対しては、環境の保全等を推進するために必要な情報の提供その他の環境施策を協働で推進するために必要な支援を行うものとする。

(庁内推進組織)

第24条 市長は、環境施策について総合的な調整を行い、計画的な推進を図るため、庁内に必要な組織を置くものとする。

第4章 雑則

(委任)

第25条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成19年4月1日から施行する。

(奥州市環境審議会条例の廃止)

2 奥州市環境審議会条例(平成18年奥州市条例第344号。以下「旧条例」という。)は、廃止する。

(経過措置)

3 この条例の施行の日の前日において、旧条例第3条に規定する奥州市環境審議会の委員である者は、この条例第22条第3項の規定により審議会の委員として委嘱されたものとみなす。ただし、この場合における最初の任期は、平成20年8月31日までとする。

(平成23年3月17日条例第14号)

この条例は、公布の日から施行する。

(平成24年3月9日条例第8号)

この条例は、公布の日から施行する。

奥州市環境基本条例

平成19年3月14日 条例第3号

(平成24年3月9日施行)

体系情報
第12編 生活環境/第5章 環境保全・環境衛生
沿革情報
平成19年3月14日 条例第3号
平成23年3月17日 条例第14号
平成24年3月9日 条例第8号