第100回 ILC計画

更新日:2023年09月29日

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第100回 ILC計画

ILC計画

 ILC研究所は、素粒子物理学に関する国際研究機関で、日本での実現に向けて国内外で検討が重ねられていることは、これまでも紹介してきたところです。

 文部科学省の第2期有識者会議の議論では、素粒子物理学・加速器科学分野で日本の高い発信力や今後も世界をリードする研究成果の創出が期待されていることが確認されました。一方で、ILC計画をさらに進めていくための課題も指摘されました。今後は、それらの課題をクリアしていけるような議論や取り組みが必要になると見込まれています。

 ILC研究所は、宇宙の謎や物質構造の謎に関わる研究を進めることができると期待されており、科学的・学術的意義は高いと考えられています。ILC計画の核となるリニアコライダー(直線型加速器)の研究理論は、今からさかのぼること57年前の1965(昭和40)年に提唱されました。ヨーロッパで運用されている欧州原子核研究機構セルン(以下、CERN)という国際研究機関の歴史にも深く関係しています。CERNは、1950年初頭に欧州12カ国が協力して立ち上げた科学組織で、設立から今日までのおよそ70年、さまざまな研究成果を挙げて学術の進歩に重要な役割を果たしてきました。また、CERNに在籍する科学者とその進歩を可能にした技術が世界的にも評価され、これまで数々のノーベル賞を受賞しています。そして、CERNの研究施設から広がる技術、仕組みや考え方は、社会に大きな変化をもたらし、さまざまな分野で人類の社会と生活の向上に大きく貢献してきました。国境を越えて設立されたCERNは、共通目的に向かう協働の価値を『科学』で示すことに成功し、開かれた環境と信頼により協力を行うことの有効性を証明しました。現在CERNの加盟国は20を超え、日本を含む60カ国以上が共同研究や科学協力を行っています。そしてその理念は時代と共に、さらなる広がりを見せています。

 こうした意義深い歴史を持つCERNとILCは研究テーマにおいて深い関係性があります。ILCの実現は「日本に国際機関が誕生する」ということにとどまらず、『そうした歴史的価値を共有できる国が日本である』ことを世界に発信できる取り組みになるといえます。

奥州市の取り組み

 市では、ILCを担当する部署として総務企画部内にILC推進室を設置し、平成28年4月に策定した「奥州市ILCまちづくりビジョン」を基に、ILC実現に向けた取り組みの方針を明らかにし、活動を推進しています。このほか「第2次奥州市総合計画」の中で、めざすべき都市像を実現する二つの戦略プロジェクトの一つに「世界へ発信するまちづくりプロジェクト~ILCプロジェクト~」を掲げています。2月に策定された後期基本計画でも戦略プロジェクトに位置付け、ILC実現が今後の市勢発展に重要
な意味を持っていると捉えています。

 また、市は2年8月に設立された東北ILC事業推進センターにも加盟し、会員の一員としてILC受け入れに関する地元地域の具体案件の検討にも参加しています。この先もILC実現に向けた課題解決に積極的に貢献していきたいと考えています。

 次に市内の協力体制を紹介します。平成24年度に市長を会長とした奥州市ILC推進連絡協議会を設立して活動しています。市内事業者などが会員として活動しており、会員同士が関係性を持って活動することで協力体制が生まれています。その結果、市全体でILCの理解促進と活動支援の輪が広がり、それがさらなる発展につながっています。

ILC希望のひかり

 市では、ILC実現に向けてさまざまな活動を推進していますが、その中でも市民の皆さんへILCについて知っていただく活動が重要であると考えています。皆さんの理解促進が、市のまちづくり政策の推進につながるためです。
広報おうしゅう「ILC希望のひかり」コーナーでは、ILCに関連する情報をさまざまな角度から解説し、皆さんへお届けするために、平成24年4月号から隔月でスタートしました。平成25年4月以降は毎月掲載に拡充し、現在に至ります。
また、同時期には「奥州市ILCウェブサイト」を開設し、ウェブ上で全国に向けてILCに関係する情報を発信しています。

 これからも皆さんへ情報を届け、ILC実現に向けた理解を深めてもらえるように、さまざまな取り組みを模索していきます。

ILC出前授業

 市内の小学校、中学校へのILC出前授業にも力を入れています。新型コロナウイルス感染症が確認されてからは、感染症対策を徹底した上で開催しています。

 ILC出前授業は、将来、社会の中心を担う児童・生徒に、ILCについて学んでもらい、

  • 科学に対する関心を高めること
  • ILCが持つ地域への波及効果を考える機会にすること
  • 将来の進路選択の視野拡大の一助にすること―

を目的として開催しています。

 今後もILC出前授業を積極的に実施し、児童・生徒へのILCの認知・理解促進に努めていきます。

終わりに

 新型コロナウイルス感染症により、私たちの生活も含めてさまざまな影響が生じていますが、ILC計画の重要性が変わることはないと考えています。むしろ、基礎科学の進歩こそ、この困難な状況を打破するため一層必要とされるのではないでしょうか。

 ILCが持つ多岐にわたる可能性は、今後の日本や国際社会に必要とされる重要なものです。市の今後のまちづくりや持続可能な社会の実現にも重要な役割を担っています。

 市では、この先もILC実現に向けた活動を推進していきます。引き続き、皆さんのご支援、ご協力をお願いします。

この記事に関するお問い合わせ先

ふるさと交流課 ILC・多文化共生推進室
〒023-8501
岩手県奥州市水沢大手町1-1
電話番号:0197-34-2123
ファックス:0197-22-2533
メールでのお問い合わせ

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