夢物語 2

更新日:2023年09月29日

ページID: 1359
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申出ントナシ抑英吉利国ト云フハ如何ナル国ニ候ヤ乙ノ人答ケルハ英吉
利国ト申ス国ハ阿蘭陀国王都アハステルタシムト申所ヨリ百八十里許
モ隔リ順風ノ時ハ一日夜位ニテモ通船イタス所ニテ国之大サハ日本ホト
モコレ有ヨシニ候ヘトモ寒国ニテ人数ハ日本ヨリ少ク總括シテ人口一千
七百七十萬六千人ト申候国人敏掟ニシテ事ヲ勉強シ怠惰セス文
学ヲ勤メ工技ヲ研究シ武術ヲ練磨シ民ヲ富シ国ヲ彊クスルヲ先務
ト仕候海濱浅灘礁多ク外冦入カタク候ニ付近来歐羅巴大乱ノ
時モ英吉利ハ孤立シテ国民干戈ノ災ヲ免レ申候国都ロンドント申
所ハ至テ繁昌ノ所ニテ待坊美麗人戸稠蜜ニシテ人口ノ凡百萬許
モ居リ候由海運ノ都合宜シキ所ニテ専ラ諸方交易ヲ改メ諸国

申し出たということです。いったいイギリスという国は、どのような国なのでしょうか」
乙の人が答えていった。
「イギリスという国は、オランダの北にある島国です。オランダの首都アムステルダムから、海上およそ百九十八里ほど離れた所で、順風のときには、一昼夜くらいで船が往来できます。国の大きさは、日本と同じ程度だということですが、寒い国のせいか、人口は日本より少なく、全体で一千七百七万六千人といわれています。国民性は活動的であり、かつ探求心が旺盛で、物事を研究して飽きるということがありません。好んで学問に励み、工技を研究し、武術を練磨し、民を富まし、国を強くすることを、第一の目標としております。海岸には浅頼や暗礁が多く、外敵の侵入が困難であるという地勢の利点に恵まれています。ですから、近年ヨーロッパの大乱(ナポレオン戦争)が起こった際にも、ヨーロッパの国々のすべてに戦火が及んだにもかかわらず、イギリスだけは地理的に孤立していたおかげで、国民がその災害をのがれることができたほどです。
首都はロンドンといって、繁栄をきわめた町で、街並が美しく人家が多く集まり、人口およそ百万人といわれております。ここは海運の便に恵まれているので、貿易の中心となり、イギリス人はここを拠点として諸国

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