夢物語 13

更新日:2023年09月29日

ページID: 1720
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ウニ推察仕候恐ナカラ御武威ヲ損シ候ヤウニモ相成候ハント考ラレ
候甲ノ人曰ク恐ラクハ如何取扱可然ヤ尤是ハ御政事ニアヅカリ候事ニテ
容易ナラサル事ニハ候ヘトモ御存入モ候ハゞ御咄シ下サレ度候乙ノ人
曰是ハ国家御政事ノ義故中々愚昧賎民杯ノ申上候事ニ非ス候
ヘトモ蒭蕘ノ言モトル事アルノ古言ニ候得ハ恐多クモ愚按ヲ可申
上候先只今イキリス人ノ底意ハトモ角モ彼レ仁義ヲ唱ヘ漂流之人ヲ
送来候ヘハ今江戸近海ハ御要害ノ地ニテ着岸御免難成候ハゝ長
崎成トモ何方ヘナリモ着岸御免被仰付右漂流人ヲ御請取ツカワ
サレ右ノ御挨拶トシテ厚ク御褒美御恵下サレハ先第一愚按ニハ阿
蘭陀人ヲ外国ノ耳目官ニ仰付ラレ候ヘトモ彼ラハ支那韃靼天竺其外諸

したと推測し、そのため武威を誇りとする我が国の名誉を損なうことにもなりかねない、と思われます。」
甲の人がこれを聞いて、さらに質問した。
「それならば、どういう対策をとるのが賢明といえるでしょうか。もっともこれは、御政道にかかわる大事なので、軽々しく口にすることができませんが、この席だけのこととして対策について御意見があったら、遠慮のないところをお聞かせいただきたいものす。」
乙の人がつぎのように答えた。
「これは御政道の一端に関わることで、その職にない私などが意見を申し上げることは、はなはだ恐れ多いことなのですが『芻蕘の言も取るところがある』(賎しい者の意見にも聞くべきところがある)という古言もあることですから、身分をはばからず、私見を申しのべてみましょう。
「まずさしあたり、イギリス人の本心はともかくとして、彼が仁義の名において漂流民を護送してきた場合、江戸は重要な地なので、入港を許可するわけにはいきませんから、長崎なり、どこなり、適当な港に入港を許し、そこで漂流民を受け取り、その労をねぎらう意味で、褒美を十分与えることにします。それとともに次のことが考えられます。現在オランダ人は、毎年定期的に政府に海外情報を提供する義務を負うております。しかし、彼らの取引先は日本だけではありません。シナ、ダツタン(中央アジア)、インド、その他多くの国々と

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