蛮社遭厄小記 10
トイヘトモ尚評定所ニ下シテ衆評ヲ問玉ヒシニ衆官一決ノ密議ニハイキリスノ
夷賊トモ先年ヨリ海岸遠嶋ノ所々ニ恣ニ上陸致シ亂暴狼藉ノ振舞有シガ
可悪者ニテ且探索イタシ候ヘバ其國專ラ航海ヲ業トシ其俗大禁ノ切支
丹教ヲ奉ジ候由ニ付不可近者ニ候處交易奉請候ハバ使ヲ立テ舊例ニ徒テ
長崎ニ相越ベキノ所漂民護送ヲ名トシ國都ノ近邊エ罷越候事竊ニ國家
ノ動静ヲ窺ニ當リ不屈ノ至リ近頃此ヨリ後來ノ禍ヲ生ゼンモ難計俗語ニ所謂
小蟲ヲ殺シテ大蟲ヲ救フノ義ニ從ヒ漂民七人ノ命可憐卜イヘトモ兎角近付候テハ
面倒ナレバ文政年間仰付ラル舊令ニ任セ只様大砲ニテ御打拂可然也十月五日
評定所一坐議スト有ケレバ坐中瑞皐崋山ナンド地理學ヲ唱ヘテ名アル兩三輩
アリケルニゾ各々議シケルハイギリス國ハ方ニ西洋諸國中ニ於テ頗ル強盛ニシテ他ノ
國ト不同御當代始メ交易御免ヒ仰付和蘭陀卜同シ年ニ航海仕リ江戸
ニモ來往シケルニ貨物交易ノ利潤ナキヲ以テ彼ヨリシテ來ラズトゾ今更改テ交易
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更新日：2023年09月29日