蛮社遭厄小記 20
外ニハ親戚ノ力ナク瑞皐獄ニ下リナバ忽チ道路ニ迷ハントテ暫ラク躊躇
セシカ共官ヨリ嚴シク御尋ノ由聞得ケレバ遅々スルニ官ヘノ恐レアレバト鈴木春山卜
云者ニ數十封ノ書状ヲ囑シ後事ヲ遺托シテ北町奉行所大草殿官廳ヘ自ラ
訴ヘ出タリケリ抑今度ノ一條ニ付テ獄ヘ下サレタル人々ニハ瑞皐高野長英崋山
渡邊登齋藤治郎兵衞本木道平無量壽寺父子彦兵衞秀三郎惣括八名ニテ
其内學齋小關三英ハ縲絏ノ辱ヲ受ルニ忍ヒザリケン自殺シテ死ケリ鳴呼哀ムベキ
哉而シテ上表ノ趣甚手重ニシテ反逆ノ由奏セシカバ元ヨリ國家ノ御政事ニ關係シ
タルコトナレバ尋常ノ罪状ニアラズ速カニ御小人目附立合大草殿親シク訟庭ニ
出ラレ御吟味ノアル様イト顯密ニゾ有ケル然ハアレドモ無人島行ヲ謀リツルモノ
彦兵衞秀三郎治郎兵衞無量壽等ナンドハ瑞皐崋山卜一面識ダモ無キ事ナレバ
同ジク事ヲ謀ル可キ様モナシ又無人島行ノコトモ後日官命ヲ請テ航海セントノ
催ニテ實ニ未定ノ談話ノミナレバ外ニ尋ネ玉フベキヤウモナク官ニモ讒訴トハ分明
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更新日：2023年09月29日