夢物語


『夢物語』は、日本漂流民を乗せて渡来したアメリカ船モリソン号をめぐる幕府の対外政策を批判した長英の著作である。
長英は、イギリスの国力について具体的なデータをあげて説明し、同国の勢力が日本近海の島々におよんでいる事実をあきらかにする。そして、モリソン号が漂流民の送還を口実に人道の名をかかげて渡来した場合、これに打払いをもってのぞんだら、イギリスは日本を「不仁の国」とみなすであろう、と打払いに反対し、モリソン号の入港を認め、漂流民をうけとった上で、交易の要求は拒絶すべきであると主張する。このような長英の意見が問答形式で記されており、夢の中の集会で見聞した話という体裁をとることで幕政批判の罪を逃れようとしたが、夢物語は写本としてかなり流布し、社会的反響をよんだ。これが原因となり、長英は蛮社の獄で幕府に捕らえられ、永牢の身となった。尚、『慎機論』を著した渡辺崋山も同様の罪で捕らえられ、国元にちっ居を命ぜられた。
個人蔵
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更新日:2023年09月29日