水沢工業高等学校機械科「SDGsバッジをつくろう!」が始動しました
岩手県立水沢工業高等学校 機械科3学年 阿部唯人さんをリーダとするグループは、学校の課題研究の一環として、昨年度に先輩たちが挑戦した奥州市の誇る鋳造技術をもって、アルミニウム(以下、アルミ)製のSDGsバッジ作成に取り組むことになりました。
さて、何を作ろうか。先輩に続き、市の特産品を生み出している鋳物技術を使いたい。軽くて溶解温度の低いアルミを素材にしたい。新しい価値を生むSDGsへの意識を高めるもので個人向けに喜ばれるものはどんなものか、シンボル的に使えるものには何があるだろうか・・・。
課題研究の内容を考えていく中で、リサイクルのルートが確立されている空き缶ではなく、「未利用でゴミになってしまっているアルミ」に着目したのです。
【SDGs学習会】
令和5年6月1日、水沢工業高校の教室を会場にSDGs学習会が開催されました。今年も市生活環境課と奥州めぐみネットにお誘いをいただきました。
奥州めぐみネット若生和江代表が「ぼくらができることを活かしたSDGs~スキルで地域と地球をハッピーに~」と題して、世界的な取り組みであるSDGsとは何か、自分ごととして捉える思考の仕方について講演。SDGsの概要に理解を深めました。
続いて、市生活環境課 大内環境係長から「今回、水沢工業高校では、すでにSDGsをベースにした事業スキームが検討されており、SDGsの達成との関わりのポイントは4つ。 1つは「やっかいもの」への挑戦、2つめは温室効果ガスへの挑戦、3つめはSDGsのゴールを選ぶ、4つめは情報発信、との話があり、今後の道しるべを提示しました。
その後は、今年も鋳物作業に取り組むことから、鉄器を使ったホットサンド調理を体験。生徒たち、おっかなびっくりの様子もありましたが、目で見て、手で触って、使ってみて、舌で味わって、大いに奥州市の鉄器の特性に触れた1日でした。
【奥州金ケ崎行政事務組合 胆江地区衛生センター様 訪問】
6月16日、この日は、奥州市のごみやリサイクルの現状について学ぶべく、胆江地区衛生センターを訪問。粗大ごみ処理施設を見学しました。雨の中、傘をさしながら徒歩移動。自分たちの行動から、できるだけ二酸化炭素を排出しない工夫です。
最初に施設管理課の馬場課長補佐より施設概要の説明を受けました。この不燃ごみ処理は、焼却施設の改修に伴い焼却ピットがホッパーに変更されたものの、ほぼ昭和55年当時からのもの。5時間で50トンの処理能力とされていますが、当時に比べ、分別しなければならない物が増えたこと、その選別を手作業で行っていることもあって、処理能力は落ちているそう。コンベアを流れる粗大ごみや不燃ごみは、大型の破砕機により破砕処理して、「鉄くず」「可燃ごみ」「不燃物」の3つに分別されていきます。ちなみに、焼却施設の見学受け入れは毎年あるそうですが、不燃ごみ、粗大ごみはめったにないとのことでした。
さて、頭に保護キャップとヘルメット、鼻と口に使い捨てマスクを装着して、いよいよ見学です。不燃ごみのピット前で説明を受ける生徒たち。
リサイクルできるものをきちんと選別しないと、鉄以外はほぼ全て不燃ごみになってしまうとのこと。私たちが「リサイクルに取り組むこと」が、ごみの総量を減らすためにいかに大事であるかを実感しました。
この時、取り除かれた物品群の中にスプレー缶のストックをみつけた生徒たち。持ち込まれた場合に取り除いているとのことでしたが、松川先生が缶を手に取ってみると、なんとアルミ製!現状では、ごみとされてしまっているアルミです。重量のある原材料を見つけました。
最後に、馬場さんより「皆さんのような若い力と研究、活動に期待をしています」とエールをいただき、よりいっそうSDGsに取り組む気持ちを新たにした生徒たちでした。
【株式会社ミズサワセミコンダクタ様 訪問】
6月30日、生徒らは、水沢工業団地内にある株式会社ミズサワセミコンダクタを訪問しました。企業の所有する3Dプリンターでバッジの原型作りを行う計画です。この日も雨降りでしたが、もちろん徒歩移動です。
水沢工業高校のOBらに温かく迎えられ、嬉しそうな表情の生徒たち。こちらでは、23名の先輩方が活躍されているそうです。先輩方に企業概要の説明を受け、施設見学です。
社訓が「感謝と和」とされているそうですが、壁に貼られた社員一人一人の決意には「向き不向きよりも前向きに」「まずやってみよう」などの言葉があり、皆さんがいきいきと仕事に取り組んでいることが伝わってきました。どの部屋の壁面照明スイッチにも「こまめな消灯を!」の文字が複数躍っていましたが、2018年度からSDGsにも取り組んでおり、現在は社員食堂での事前オーダー制によるフードロス活動なども行っているそうです。
工場見学の中で、実際に稼働状況を見せていただいた機械は2つ、UV印字プリンターと、高性能3Dプリンターです。
UV印字プリンターでの印刷は、白色は厚さ15ミクロン、他の色ならば8ミクロンの薄さで可能です。ボールペン3本の印刷に、3~5分程度かかるとのこと。綿棒の側面に印刷された文字の小ささに、驚く生徒たち。
高性能3Dプリンターは、30センチメートルまでの大きさのものを作成することが出来るそうです。厚さ0.003ミリの層を重ねて造形するため、大きいものを作成する場合には数日を有することもあるとのこと。樹脂の固さを配合指定することができ、1つの製品の中に固い部分と柔らかい部分を同時に作ることが可能だそうです!
その後、生徒たちは実際にパソコンで3Dプリンターのデータ作成作業も体験しましたが、バッジ原型の造形には3~4時間要するため、予め製作いただいたものを受け取りました。自分たちでデザインした原型がこの手の中に!生徒らは感動しきりです。
その後、生徒たちからOBの方々に相談が持ち掛けられました。実は、バッジを小さく作りたいため、奥州SDGsシンボルマークの各パーツへの色塗りが、手作業では難しいことに悩んでいたのです。昨年度に作成されたキーホルダーは、生徒たちが手塗していましたが、今年のバッジでは手塗作業に限界があったのです。
OBの方々が「まかせてください」と、UV印字プリンターでの着色を快諾。安堵する生徒たち。SDGsの17番目のゴールには「パートナーシップで目標を達成しよう」とありますが、つながることによって可能性が広がります!
最後に、OB社員の皆さんと一緒に記念撮影。先輩からかけられた「失敗することだってあるけれども、皆で乗り越えて今がある」という言葉は、これから社会に出る生徒たちへのエールです。
雨もあがり、課題も解決でき、明るい表情で帰校する生徒たちでした。
【株式会社及富様 訪問】
7月10日、生徒たちは鋳物技術を学ぶため、水沢羽田町にある株式会社及富の工房を訪ねました。ここにも、水工OBが!菊地さんと熊谷さんのお二人からご挨拶がありました。
「漠然と見学するのではなく、興味を持って見学して欲しい」
「鋳物は素材として再利用ができる、200年前からSDGsに合致した産業である」
との言葉に、生徒たちは真剣なまなざしで聞き入っていました。
工場見学では、熊谷さんから、材料には銑鉄と古銑を使い、検品で不良となった製品も溶かして再利用をしていること、燃料にはコークスを使っており、昨年までは実証実験のために青森産リンゴ由来のバイオコークスも使用していたことなどをお聞きしました。
鉄を溶して鋳型に流し込む工程や、器具、鋳型作成についての説明を受けたあと、砂を固めて鋳型を作る実際の作業を見学しました。生徒たちは、鋳型の材料である砂に種類があることを知って驚いていました。
製品の加工工程を実際に見て、錆止めに酸化被膜をつくる技術が昔も今も変わらないこと感銘を受けた生徒たちです。
菊地専務から「鋳物は古いものと思われがちだが、実は製品開発など新しい取組を行っている産業でもある。200年前から行われている地元産業にぜひ興味を持って欲しい」という声掛けがあり、生徒たちは、これから行う鋳物作業に気持ちを新たにしているようでした。
これから鋳型の作成を行うにあたって、型の材料や作成方法など、まだまだご指導をいただく機会がありそうです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【奥州市議会、奥州市役所、ファミリーマート奥州営業所への協力依頼】
7月11日、奥州市役所を訪れた生徒たち。この日はバッジの原材料となる「廃棄されるアルミごみ」の収集に協力をいただくため、企業団体三者に依頼文書を手渡しするために来たのです。
まず最初に六階にある奥州市議会事務局を訪問。市議会議長に、リーダーの阿部君が依頼文書を手渡ししました。
「みなさんの活動を誇りに思う。去年の先輩に続き、ゴミに着目してさらに一歩前に進んでいる。アルミ製の物が様々あることを改めて知ることができた。市議会でもSDGsに関し提言をしており非常に大切な取り組みととらえており、意識を高めるためにもできる限り協力する」とのお言葉をいただきました。
その後、三階講堂に移動。奥州市役所への依頼文書は、生活環境課長に手渡ししました。
「ぜひ積極的に進めてください。職員もできるだけ手伝います」
実は数日前より、生活環境課内では、庁舎内に設置する回収ボックスがせっせと作成されていました。本庁舎の地階から六階までの給湯スペースに回収ボックスを設置します。
つづいて、株式会社ファミリーマート 北海道・北東北リージョン 奥州営業所への依頼文書は、奥州営業所の中西所長に手渡しました。
「今は緊張しているかもしれないけれど、こういった経験が大事な時。SDGsの循環を理解する、そういった取組に参加できることに感謝したい。当社にとっても、この取組をきっかけにしてSDGsへの理解を深めたい。今回繋がりを持てたことの意義は大きいものです」とのお言葉をいただきました。3Dプリンターで作成されたバッジ原型をお見せすると、中西所長から「精巧ですね!」と感嘆の声が。出来上がりが楽しみです。
これから生徒たちは、原材料の収集と鋳物作業に取りかかります。自分たちの手で新しい価値を生み出すために、様々な支援を受けて、歩みを進める生徒たち。奥州めぐみネットもひきつづき応援していきます。
今後の展開にご期待ください!

★今回の活動とSDGs★
【4 質の高い教育をみんなに】

【4 自由に学べる環境をみんなに[奥州市版SDGs]】

第一線で活躍する鋳物の専門家から、直接、伝統技術や先進技術を学び奥州市の伝統産業の持続可能性の向上に寄与しました。
【17 パートナーシップで目標を達成しよう】

【17 みんなが「つながる」まちづくり[奥州市版SDGs]】

高校と奥州めぐみネット、企業団体や市が協力することで、活動が進んでいきます。学習会の講師派遣には県の制度も利用しています。
環境学習や環境教育のサポートについて
市や奥州めぐみネットでは、環境学習のサポートを行っています。市内の企業、団体、地域コミュニティ、学校など興味のある方は、市生活環境課環境係(0197-34-2340(直通))までお問い合わせください。
更新日:2023年09月29日