奥州市の未来デザイン会議(市民フォーラム)を開催しました

奥州市では、次期総合計画※の策定に向けて、市民の皆様と一緒に奥州市の将来像を考える市民フォーラム「奥州市の未来デザイン会議」を令和8年5月31日に開催しました。
デレーターを務めるのは、奥州市で地域ブランディング等を手掛ける株式会社公園/Planter代表の宮本拓海氏、そして市内各地域にゆかりのある多様なバックグラウンドを持つ5名のパネリストが登壇し、奥州市への深い愛情と未来への鋭い提言が飛び交う、ライブ感満載の議論が繰り広げられました。
※総合計画とは
これからのまちづくりの“全体設計図”であり、長期的な目線で「どのようなまちになったらよいか」という将来像や、優先的に進めるべき取り組みを整理・見える化するための計画です。
当日は木のおもちゃで遊ぶことのできる「木こりんパーク」の出展や飲食ブースも開設し、賑わいの中で開催されました。
登壇者
【コーディネーター】
宮本 拓海 氏
株式会社公園/Planter代表。水沢出身。2019年から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。2025年に店舗・シェアオフィス併設の「Planter」をオープン。
【パネラー】
高橋 健太郎 氏 ※「高」は、はしごだか
文秀堂株式会社代表取締役。水沢出身。事務機器販売や南部鉄器を取り扱う経営者。30歳で奥州市に戻り、中1と小3の子を持つ42歳。
佐藤 睦 氏
「メゾンデュラミティエ」代表。江刺出身。東京・仙台での経験を経てUターン開業したパン屋の代表。市役所西隣で店を経営。
千田 ゆきえ 氏
株式会社千田精密工業代表取締役。前沢出身。半導体製造装置部品を扱う製造業の女性経営者。父の会社を承継し、前沢、大槌町、花巻に工場を持つ。8歳の娘を持つ。
若槻 慎也 氏
県農協青年組織議会理事。胆沢出身。「奥州市で二番目にうまい米を作る男」。農業14年目。農事組合法人でカルビーのジャガイモ生産管理も手掛ける。
千葉 泉水 氏
奥州市社会福祉協議会職員。衣川出身。大学卒業後奥州市に戻り、地区担当として活動。まちづくりアカデミー修了生。
【コメンテーター】
奥州市長 郷右近 浩
ディスカッションの概要
第1部 パネルディスカッション
宮本:今回の総合計画策定は、行政が市民や民間企業の声を真摯に聞きたいという趣旨で企画されました。市民の皆さんが意見を出すことで、行政・民間・市民が手を取り合って未来を作る、またとない「チャンス」と捉えましょう!
宮本氏は、現在の総合計画が掲げるビジョン「地域の個性が光り輝く自治と協働の街、奥州市」と6つの分野を説明し、深い議論への期待を促した。まずは、それぞれのパネリストにとっての奥州市とはどんな場所なのか。
【Part.1】奥州市が秘める「ポテンシャル」と「課題」
宮本:それでは皆さんに伺います。「奥州市」と聞いて、まず何を感じますか?
高橋:私は奥州市での暮らしをポジティブに楽しむべきだと感じるんです。人口減少は現象であり、それが課題かどうかは捉え方次第。子供と過ごす中で「きっと何かある」という期待感を持って生活しています。30歳で奥州市に戻った時はネガティブな印象もありましたが、実際に生活すると面白いことや、南部鉄器、製造業、米作りなど明確な「売り」があることに気づきました。奥州市はそれだけのポテンシャルを秘めていると力説したいですね。
佐藤:奥州市は「まだまだ伸ばせる街」であり、伸びる可能性を秘めていると実感しています。特にコミュニティと産業(飲食業)を通じて街を活性化できると考えています。東京から戻っての開業も不安はなかったですね。「美味しいパン屋やコーヒー屋があるだけで良い街に見える」という言葉を大切に、地域活性化への熱意を燃やしています。
千田:岩手県の総合計画策定に携わった経験から、「幸福」と「豊かさ」が非常に重要だと考えています。奥州市はまさに豊かな郷土です。産業面では北上川流域の半導体・自動車産業の集積や、県外から見ても進んでいる産学官連携を「素晴らしいリソース」と評価しています。これらを今後どう活用するかが、奥州市の未来を左右する鍵となるでしょう。
若槻:奥州市の魅力は、他地域と比較してもお米の品質が高いことです。しかし、農家の平均年齢は約72歳と高齢化が進んでいます。将来的に活気の低下や獣害増加が懸念され、農業の衰退は地域の衰退に直結すると感じています。若者の挑戦意欲と年配者の保守的な意見との間で活気が失われる現状も課題です。一方で、地域おこし協力隊との活動を通じて、奥州市の自然の美しさを再認識した経験もあり、この魅力をどう生かすかを模索しています。
千葉:福祉とまちづくりは共通の目的を持つと感じています。福祉は特定の対象者だけでなく「普段の暮らしの幸せ」であり、地域づくりは「誰もが住み続けられる地域」を目指すものです。まちづくりアカデミーでの経験から、奥州市には人・物・場所・繋がりのリソースが豊富にあることを実感しています。「誰もが安心して暮らし続けるための繋がりや機会を増やすことが重要」だと力説したいですね。
【Part.2】未来を拓く「行動」と「視点」
宮本:奥州市が抱える課題、そして可能性が見えてきました。では、奥州市の活性化のために、具体的に何が足りないのか、何をすべきだとお考えでしょうか?
高橋:市役所任せではなく、市民一人ひとりが「もっとこうあったらいいな」と考え、失敗を恐れずに「とりあえず何かやってみる」行動が重要です。詳しい人に聞くなど、一歩踏み出す人が増えれば良くなるはず。横のつながりの充実も必要だと感じています。
佐藤:行政はインフラや制度の「土台」を作るもの。個人がそれを活用し、自分の意思で行動・発信することが大切です。会社や行政に頼りきるのではなく、自ら行動するマインドが必要ですね。既存の地元の良さに加え、外部からの新規参入(知識、体験、人)を積極的に受け入れるべきだと考えます。
千田:市政に市民がもっと参加し、市民の声を市政に反映すべきです。市は、市政のスタンスや施策をSNSやデザイン力を活用して若年層に響くブランディングで発信する能力を高めるべきでしょう。さらに、集めた市民の声を市役所内に留めず、民間企業に開示し、新たな事業チャンスにつなげるべきです。
若槻:農業には華やかさが足りないと感じます。作業をいかに楽しむかを工夫し、農業の魅力を若い世代に伝えていく必要があります。自分の作った米を「うまい」と言われるようなプロ意識を持つことも重要だと考えています。
千葉:地域住民の困りごとや要望を行政の制度だけで解決するには限界があります。そのため、小さい単位(自治会や町内会)で住民が主体的に課題解決を考える機会が必要です。住民の声を「聞いて終わり」ではなく、形にしてフィードバックし、住民を巻き込みながら実践していくことが重要だと感じます。
【Part.3】地域特性を活かす「総合計画」の形
宮本:旧5市町村(水沢、江刺、前沢、胆沢、衣川)それぞれに、異なる歴史や文化、生活圏があります。一つの総合計画で全てを網羅するのは困難ではないか、あるいは地域別に特化した計画が必要なのではないか、という問題意識もよく聞かれますが、皆さんの見解を伺えますか。
高橋:奥州市という行政のサイズは、実際の生活コミュニティ(小学校区や町内会など)よりも大きく、生活圏と乖離しています。行政は効率性のために統合されましたが、住民の生活感覚とは異なる。大枠の総合計画は必要ですが、それをどう捉え、生活に落とし込むかは各住民や地区次第であり、難しい時代になっていると感じます。
佐藤:奥州市は広大なので地域ごとに事情が違うのは当然です。シンプルに、地元企業にお金を落とすことが重要だと考えます。地元のパン屋や店舗など、地域で頑張る企業を応援することで、地域内での経済循環が促進されます。
千田:旧5市町村それぞれが持つ良いリソース(強み)を伸ばし、是正点(弱み)を横串連携で補い合うことが重要です。柔軟に連携をハンドリングできるトップの手腕が問われる地域だと感じています。
若槻:奥州市の強みは「歴史ある米どころ」であり、この農業を伸ばすのが最も有効だと考えます。普段気づかない四季の美しさや自然の豊かさを、外部からの視点を通じて再認識し、それを地域の魅力として発信すべきでしょう。個人的には、市内各地の「大谷」地名を活用することも面白いのではないでしょうか。
千葉:奥州市全体で一つの大きなコミュニティを作るのではなく、旧5市町村それぞれの特徴やこれまでの対話を残しつつ考えるべきです。私の出身である衣川は「星空日本一」や豊かな自然、そして温かい地域コミュニティのつながりが魅力であり、これら衣川ならではの地域性を維持していくことが重要だと考えます。それぞれの地域性を踏まえつつ、奥州市全体としてどこを軸に、住民が地元に住み続けたいと思えるかを考える必要があるでしょう。
第2部 全体ディスカッション
議論は白熱し、第2部では市長も加わり、会場から寄せられたアンケートフォーム(Slido)の意見も交えて、さらに深く掘り下げられました。
市長:第一部ではパネリストの皆さんの話から多くの気づきを得ました。総合計画が市民にとって何であるのか、自分たちの街の計画を反映しているのか、どこを目指しているのかという点に私自身も疑問を持っていました。行政側と市民側の考えに乖離があることを認識しています。
宮本:ありがとうございます。では第二部では「地域を輝かせ、奥州市として魅力ある都市にするために何が必要か(一体感がないのでは?)」という参加者からの質問に対し、パネリストの皆さんに「どんな総合計画なら良いか」「どういう目標を立てるべきか」という視点でアイデアを求めます。
高橋:総合計画は旧市町村で分けず「全体が向かう目標」を掲げ、市役所や市長からの一方的なものではなく、市民が主体的に作り皆で向かっていく指針とすべきです。市民がまず行動を起こし、直面した問題を市役所に投げかけるサイクルが重要だと強調したい。
佐藤:奥州市の既存の魅力(工業、農業など)を再発見し、他の成功事例から発信方法を学び、積極的に真似るべきです。「一体感」は無理に求める必要はなく、行政はまちづくりのベンチマークを示しつつ、インフラ整備等の土台を作り、個人がそれを活用する構造で良いのではないでしょうか。市民は意見を内輪だけでなく、もっとストレートに公に発信すべきです。自身の活動も一種の「政治活動」と捉え、行政に頼らず、自分はどうしたいかを考え、行政の土台をうまく活用することが結果的に一体感につながるのではないでしょうか。
千田:5地区それぞれの歴史とプライドは尊重し、先人の築いたリソースは最大限活用・共有すべきです。一方で、若い世代は旧市町村の意識が薄くなってきているため、彼らを中心に地域を越えた横串を刺し、一体感を醸成することも必要だと考えます。全員が満足する計画は難しいため「集中と選択」が不可欠でしょう。個人的には「教育」が未来を作る軸だと捉え、子育て世代にフォーカスした政策を中長期で考えるべきだと提言します。他市町村の先進的な事例を積極的に学び、自地域に生かしていくことも必要ではないでしょうか。
若槻:農業の課題は、冬場の収入確保と新規就農者の育成です。特に昭和世代と若者との世代間ギャップを解消する必要があります。補助金だけでなく、地域全体で収益向上策(例:奥州市産農産物のみを扱うスーパー制度など)を検討すべきです。農業は環境や景観と密接に関わるため、担い手減少の中でどの農地を守り、どう活用するかを計画に盛り込むべきだと考えます。
千葉:住民が奥州市に住み続けたいと思うのは、「自分にとっての居場所や役割」があるかどうかが重要です。一体感は、共通の居場所や役割がなければ必ずしも生まれない可能性があります。地域の魅力を活かし、住民が「住み続けたい」と感じられる環境づくりのために、具体的なアイデアや提案を市民皆で考えられたら良いですね。
【エピローグ】
イベントの最後に、登壇者から、本イベントの感想と今後の展望が語られた。
千葉:まちづくりや福祉に関わる中で、市民として奥州市の未来にどう貢献できるか考えるきっかけになりました。アカデミーを通じて地域づくりの仲間や繋がりが増えたことを実感しており、今後も奥州市の一員として、新しい風を吹かせたいです。
若槻:米作りの視点しか持たなかった自分と違い、パネリストの多角的な視点に感銘を受けました。米作りにおける選択の難しさにも触れ、今後はアンテナを広げ、新しい視点を取り入れて地域の農業を良くしていきたいです。
千田:市民が市政について深く考え、短時間で多くの意見が出たことに感動し、市民として誇りを感じました。多様な意見を市政に取り入れる姿勢を評価します。会社経営の経験から、市民一人ひとりが「奥州市の役に立った」「誇りを持てた」と感じられる「内発的動機づけ」となる機会を創出することの重要性を強調したいですね。
佐藤:様々な議論ができて学びになりました。Uターン・Iターンの促進が人口減少対策に重要であると提言したいです。既存の支援に加え、企業単位での誘致施策や、空き物件・既存施設の活用といった具体的なアイデアをさらに検討すべきでしょう。
高橋:イベントを通じて多くの学びがありました。総合計画が教育、農業、福祉など全ての分野を包括するものであることを再認識しました。市民が総合計画の内容に関心を持ち、自ら情報に触れることが重要だと感じました。大きなことでなくとも、市民一人ひとりが身近な範囲で「一歩踏み出す」ことが大事ではないでしょうか。
市長:このフォーラムは市民に奥州市の総合計画策定に「自分ごと」として深く関わってほしいという思いから開催したものです。行政は活動の「土台」を作り、市民がその上で彩りや動きをつけていく形を目指していきたい。市民からの活発な意見に喜びを感じており、今後もWEBアンケートやワークショップなど意見を出しやすい仕組みを通じて、「市民が満足し、興味を持って関われる総合計画を共に作っていくことが理想ですね。
この日交わされた熱い議論は、奥州市の未来を拓く新たな一歩となることが期待されます。市民一人ひとりの「自分ごと」意識と「一歩踏み出す」行動が、奥州市をさらに輝かせる原動力となると思わせる議論が繰り広げられました。
市民意見を募集しています(6月30日まで)
市では、まちづくりの「軸」となる次期奥州市総合計画の策定を進めています。
計画の策定にあたり、市の将来を担う世代や地域で協働する皆様の視点を反映させるため、市民意見を募集します。
WEBフォームによる簡単なアンケートとなっておりますので、市民の皆様の率直な声をお寄せください。
この記事に関するお問い合わせ先
- みなさまのご意見をお聞かせください
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更新日:2026年06月19日