おうしゅう市議会だより 2月臨時会 特別号
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発行日/ 平成29年3月9日
発行/ 奥州市議会
編集/ 奥州市議会広報編集委員会
百条委員会報告書 万年の森残土問題 不適正事務処理で市に損害 臨時会、全会一致で可決
奥州市議会臨時会を平成29年2月8日に開催し、奥州万年の森における太陽光発電事業に関する調査特別委員会(通称:百条委員会・佐藤洋委員長)がまとめた調査報告書を全会一致で可決。不適正な事務処理で市に損害を与え、市長の責任は重大と指摘した。
真相究明に特別委員会設置
前沢区字石田地内「奥州万年の森公園」において、民間事業者による太陽光発電事業(事業面積53.7ヘクタール、想定年間発電量17,214メガワットアワー、一般家庭4,800世帯分の消費電力相当)に係る土地造成工事が展開されていた。その施工地内に平成23年2月に完成した奥州金ケ崎行政事務組合の「一般廃棄物最終処分場」建設工事の際に発生した土砂約12万立法メートルが山積みされており、この土砂の処理が問題となっている事態が平成27年6月定例会における一般質問において、明らかにされた。
この土砂は当初、当該最終処分場の覆土として使用するほか、公共事業用地に使用するという名目で、市と行政組合の申し合わせにより一時仮置きされていた。しかし、最終的に、いつ、だれが、どのように処理するかが明確に示されておらず、太陽光発電事業着手に伴い、支障となるこの土砂の撤去・移動、経費負担をめぐって関係者が協議中との市側の説明であった。
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残土処理費の予算案撤回
その約一カ月後の平成27年7月21日、市長が臨時会を招集。当該土砂の活用方法等を検討するとともに、関係者(市・行政組合・民間事業者)と協議したが、市費負担により土砂を廃棄せざるを得ないとの理由で、土砂の撤去費用試算額9,800万円を予算措置する補正予算案が提出されたが、そもそも一時仮置きの土砂をなぜ市費を負担して撤去することになるのか、経過の説明不足と関係者への再協議を議会が指摘したところ、市長は補正予算案を撤回、再度関係者と協議することとなった。
調査の主眼点は
その後、市長が事業者と直接交渉を行い、平成27年8月28日開催の全員協議会において、土砂の撤去費用9,800万円は両者折半の形とし、事業者が当初提案していた地域貢献策(あずま屋、遊歩道、展望台整備等)を縮小・見直すことで、市負担分と相殺する決着を得たとの報告があった。
しかしながら、この時点までに、本件が新聞報道で大きく取り上げられていたこともあり、市民の関心も高く、土砂仮置きの経過、太陽光発電事業者の選定方法、土砂撤去費用の発生経過などについて議会としての真相究明を望む声が高まり、事業者との直接交渉で市費負担なしとする市長説明だけでは、市民理解が得られない状況となっていた。
こうした状況を踏まえ、複数の会派から「真相を究明するために地方自治法第100条の規定に基づく調査を行うべき」との声が上がり、平成27年9月25日の9月定例会最終日、賛成多数(賛成17反対9)により当委員会を設置した。
調査するに当たり、大きな主眼点は次のとおりである。
- 太陽光発電事業決定に至る経過について
- 太陽光発電事業者の選定に係る経過について
- 市による残土処理の決定に至る経過について
この調査の結果、次の事項が明らかになった。
- 不適正な事務処理
- 損害の発生
- 市長の責任
- 求められる改善点
審査経過、評価基準は非公開に
当委員会は、市長以下、関係人に対する証人喚問や参考人招致及び請求した多数の資料や記録、そして関係職員の内部情報等をもとに調査し、以下の結論に達した。 奥州万年の森公園地内における太陽光発電事業について、当該事業の導入決定から事業者選定の一連の事務処理は、公募要領、プロポーザル選定要領、そして地方自治法及び市条例等に鑑み、公平かつ公正に対する配慮に欠け、地方行政の事務執行の基本から逸脱した不適正な事務処理である。
具体的な事例としては、一事業者の事業計画に依存し、無償での技術協力・支援を受け、事業導入から事業者選定まで同事業者の提案に添う形で進められていること。評価委員会の審査経過、評価基準、企画提案書などを非公開としたこと。さらに、市による残土の全量撤去決定に至る検討過程の不透明さと重要事項の決裁における責任の所在が曖昧なことがあげられる。 これらは、市長及び関係職員の法令遵守の意識の希薄さと市民の財産を管理するという責任感の欠如が招いた結果である。
委員会開催状況
- 平成27年9月25日
調査特別委員会【第1回】
正副委員長の互選について - 平成27年10月20日
調査特別委員会【第2回】- 幹事会の構成について
- 今後の調査内容等について
- 平成27年11月26日
- 調査特別委員会 意見交換会
- 助言弁護士2名と幹事7名による意見交換会(仙台市)
- 平成27年12月2日
調査特別委員会【第3回】- 調査特別委員会運営要領の制定について
- 助言弁護士の選任について
- 調査権限及び調査経費の追加申し出について
- 記録の提出請求について
- 今後の進め方について
- 平成27年12月18日
調査特別委員会【第4回】- 調査権限及び調査経費の追加申出について
- 記録の提出請求について
- 平成28年1月15日
調査特別委員会【第5回】
記録提出要求について - 平成28年2月8日
調査特別委員会【第6回】- 請求資料の確認について
- 記録の提出要求について
- 作業分担の編成等について
- 今後のスケジュールについて
- 平成28年3月5日
- 調査特別委員会【意見交換会】
- 助言弁護士と今後の調査方法等について意見交換
- 平成28年3月22日
調査特別委員会【第7回】- 要求記録の確認について
- 記録の提出要求について
- 調査照会について
- 平成28年度調査経費の限度額について
- 幹事長の選任について
- 平成28年4月20日
【第8回】- 記録送付要求及び調査照会の結果について
- 今後の進め方について
- 平成28年4月27日
調査特別委員会【第9回】- 証人喚問に係る証人の選定について
- 今後の進め方について
- 証人喚問に係る証人の出頭を求める日時について
- 平成28年5月6日
調査特別委員会【第10回】
証人への尋問における質問事項について 証人喚問(市長・総務企画部政策企画課長・前総務企画部長・前総務企画部政策企画課長の4名) - 平成28年6月14日
調査特別委員会【第11回】- 平成28年5月6日開催の証人喚問に係るとりまとめについて
- 調査照会について
- 記録の提出要求について
- 証人喚問について
- 平成28年6月24日
調査特別委員会【第12回】- 調査照会及び記録送付要求の結果について
- 証人への尋問事項について 証人喚問(市長・前総務企画部政策企画課長の2名)
- 平成28年8月4日
調査特別委員会【第13回】- 平成28年6月24日開催の証人喚問に係るとりまとめについて
- 調査照会について (3)記録の提出要求について
- 平成28年8月29日
- 調査特別委員会 意見交換会
- 助言弁護士と委員全員による意見交換会(委員会室)
- 平成28年9月15日
調査特別委員会【第14回】- 報告書のまとめについて
- 更なる証人喚問・文書照会の必要性について
- 平成28年度調査経費の限度額の変更について
- 平成28年10月19日
調査特別委員会【第15回】- 報告書のとりまとめについて
- 調査照会について
- 記録の提出要求について
- 参考人の出席要求について
- 平成28年11月4日
調査特別委員会【第16回】- 調査照会及び記録送付要求の結果について
- 参考人聴取の方法等について
- 参考人への質問内容について
参考人招致(前総務企画部政策企画課長・総務企画部政策企画課長・前総務企画部政策企画課企画推進係長の3名)
- 平成28年11月30日
調査特別委員会【第17回】
報告書のとりまとめについて - 平成28年12月20日
調査特別委員会【第18回】
報告書のまとめについて - 平成28年12月26日
- 調査特別委員会勉強会
- 報告書案に対する意見交換
- 平成29年1月19日
調査特別委員会【第19回】- 報告書について
- 特別委員会の終結について
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おうしゅう市議会だより2月臨時会特別号 3ページ (PDFファイル: 496.5KB)
多大な損害を市に与える
市長は、今回の不適正な事務執行により多大な損害を奥州市に与えた。具体的には、残土処理費用を事業所と折半することによる、市に入るべき土地の賃料減額分2,338万円と地域貢献事業の見直しに伴う事業費削減分との総額4,900万円である。
この損害を被った責任は市長にあり、この事態を真摯に反省し、自らその責任を果たすべきである。
市長には、地方自治法をはじめとする関係法令に基づき誠実かつ堅実に管理を行う法的責任がある。今回の事務処理に関しても、市政の最高責任者としての市長の責任は重大である。
残土は事業者が処理すべき
当該事業を決定した政策判断は「迅速な決断が市民の利益に繋がる」という考えからである。しかし、執行責任者として市長が行うべき指示は「ルールに従い、手順を守らせる」ことであり、その上で慎重かつ適切な判断が必要であった。
残土処理については、本来公募要領、当該基本協定書の定めによれば、事業者が処理すべきものである。その残土処理に対して市長は、この残土は、奥州金ケ崎行政事務組合が覆土用に使用するものと、市が有効活用するものとであると何度も公の場で明言している。市にとって必要な残土であるとの認識にもかかわらず、公募要領には「造成は事業者が行う」という条件を示している。しかし、当該基本協定書及び当該土地賃貸借契約書には、市が有効活用する旨は何も明記されていない。
損害の責任は市長にある
また、事業者選定においては、一事業者の提案を勘案した形で公募型プロポーザル方式を導入し、その方式を提案した事業者を優先事業者として決定した。
この優先事業者は、公募前の設備認定、接続申請等の技術協力・支援を市に無償で行っており、企画提案書を作成する上で明らかに有利な立場にあったと言える。
市長は、公募要領、当該基本協定書及び当該土地賃貸借契約書の内容が適正かどうか判断をする立場にあるにもかかわらず、慎重な検討をせずに決裁を行っている。残土処理、事業者選定についても同様であり、その行為は安易で放任的、職務怠慢であると言わざるを得ない。その結果、奥州市に多大な損害を与えたものであり、その責任は市長にあると考える。そのうえ市長は、一連の経過について、事後に事実を知ったとの担当職員に責任を転嫁するような発言を続けている。これらのことは、市民の負託を得た市長として、責任感の欠如としか言いようのない行為である。
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委員の構成
区長 | 氏名 | 所属会派 |
---|---|---|
委員長 | 佐藤 洋 | 新世会 |
副委員長 | 菅原 明 | 日本共産党 |
幹事長 | 阿部 加代子 | 公明党 |
幹事 | 鈴木 雅彦 | 奥和会 |
幹事 | 菊池 利美 | 新世会 |
幹事 | 千葉 正文 | 奥和会 |
幹事 | 加藤 清 | 新世会 |
幹事 | 千葉 悟郎 | 市民クラブ |
幹事 | 佐藤 邦夫 | 市民クラブ |
幹事 | 内田 和良 | 無会派 |
幹事 | 及川 善男 | 日本共産党 |
委員 | 千葉 敦 | 日本共産党 |
委員 | 廣野 富男 | 市民クラブ |
委員 | 及川 佐 | 奥和会 |
委員 | 菅原 圭子 | 新世会 |
委員 | 菅原 由和 | 奥和会 |
委員 | 飯坂 一也 | 公明党 |
委員 | 高橋 政一 | 市民クラブ |
委員 | 佐藤 郁夫 | 市民クラブ |
委員 | 中西 秀俊 | 奥和会 |
委員 | 小野寺 隆夫 | 奥和会 |
委員 | 中澤 俊明 | 奥和会 |
委員 | 藤田 慶則 | 奥和会 |
委員 | 今野 裕文 | 日本共産党 |
委員 | 渡辺 忠 | 奥和会 |
委員 | 小野寺 重 | 無会派 |
求められる積極的な情報公開
万年の森太陽光発電事業のような大規模事業において、通常の行政運営からは考えられないさまざまな事案がなぜ発生したのか、市長及び関係職員からは納得できる説明は得られなかった。
特にも、基本協定に反して、最終的に市が残土の全量撤去を決定した経過については、その意思決定の曖昧さに原因があったことが明らかである。市長と関係職員の連携不足を示す説明もあり、組織として内部統制を欠いた状態と断定せざるを得ない。
また、事業者選定に係る評価委員の選任経過、公募に参加した事業者の企画提案書、評価基準とそれに基づく評価結果は、いずれも情報公開に応じていない。市民の知る権利を奪うこのような行為は、厳に許されるものではない。現在、全国どの自治体においても、事業の透明化と市民との情報共有は行政運営の基本に位置づけられている。これらの情報開示がなされないため、調査が長期化した上、事業者選定に不明瞭な点が残った。市は、積極的に情報公開を行い、市事業への市民理解を得る努力をすべきであった。
管理監督の再構築を
以上のことから、当委員会として、この事実は、最高責任者である市長の管理監督意識の希薄さと関係職員の規律厳守の欠如が招いた結果であると断定する。市長は、責任の重さを深く自覚するとともに、直ちに内部統制、管理監督体制の再構築に取り組むべきである。
併せて、今回の事案により市政の混乱と市民の信頼低下を招き、行政の停滞を引き起こした責任を市長は深く反省し、自らを厳しく律するとともに、関係職員を含めその職責に応じた厳正な処分を行うことを強く求めるものである。
議会広報編集委員会
- 委員長
菅原 由和 - 副委員長
飯坂 一也 - 委員
- 千葉 敦
- 廣野 富男
- 佐藤 洋
- 及川 佐
- 菅原 圭子
- 加藤 清
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更新日:2023年09月29日