令和7年第1回定例会 意見書・決議
・訪問介護報酬の引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める意見書
・食料自給率を向上させ、「令和の米騒動」を繰り返さないための対策を求める意見書
・令和7年度予算に係る政策提言に関する附帯決議
訪問介護報酬の引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める意見書
昨年4月に介護報酬の改定が実施され、介護報酬は1.59%引き上げられましたが、訪問介護の基本報酬は2~3%引き下げられ、多くの事業所から不安の声が上がっています。訪問介護はとりわけ一人暮らしの高齢者をはじめ要介護者やその家族の生活を支える上で欠かせないサービスです。
厚生労働省は基本報酬の引き下げ理由として、「訪問介護の利益率が高い」ことをあげています。
これはヘルパーが効率的に訪問できる「集合住宅併設型」事業所や都市部の大手事業者が利益率の平均値を引き上げているものと推測されますが、厚生労働省の調査でも約4割の訪問介護事業所は赤字であり、1軒の訪問に車で数十分かけて移動している地方の実態からはかけ離れています。
2024年の介護事業者全体の倒産や休廃業・解散が、過去最多の784社に達しました。そのうち「訪問介護」は529社と前年の427社から急増しています。調査した東京商工リサーチは「コスト高や介護人材不足に加えて、報酬のマイナス改定があり、事業継続が難しくなっている」と指摘しています。
訪問介護事業所のほとんどが地域に密着した小規模・零細事業所で、介護報酬の引き下げにより、訪問介護事業所の多くが経営難に直面しています。
いわての介護を良くする会などが、昨年5月に行った訪問介護事業所アンケートでは、介護報酬の引き下げについて、94.3%が「納得できない」と回答。影響については「事業所の経営が苦しくなる」81.4%、「ヘルパーの意欲・モチベーションが下がる」71.4%、「ヘルパーの賃金改善が難しくなる」70.0%など、事業所運営に大きく関わる問題が浮き彫りになりました。
訪問介護の人手不足は深刻です。ホームヘルパーの有効求人倍率は2023年度で14.1倍と高水準です。さらに、2022年度介護従事者処遇状況等調査によれば、介護職員の賃金は全産業平均を月額7万円下回っています。政府は訪問介護の基本報酬を引き下げても、介護職員の処遇改善加算で補えるとしています。しかし、すでに加算を受けている事業所は基本報酬の引き下げで減収となり、その他の加算も算定要件が厳しく、基本報酬の引き下げ分を補えない事業所が出ています。
介護事業者の経営環境及び介護職員の処遇の改善を実現し、在宅介護の基盤を存続させるため、訪問介護の基本報酬をはじめとした介護報酬の引き上げを早急に行うよう求めます。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出します。
令和7年3月14日
岩手県奥州市議会
提出先 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣
食料自給率を向上させ、「令和の米騒動」を繰り返さないための対策を求める意見書
ウクライナ問題や気候危機が進行する中、世界の食料はひっ迫し、国際相場は高止まりしています。国連は現在の食料をめぐる事態について「戦後最悪の食糧危機」と断定し、各国に食料の増産等の対策を求めています。
国民の食料の6割を外国に依存している我が国にとって、国内での増産が強く求められています。
こうした中、食料・農業・農村基本法に基づいた「食料・農業・農村基本計画」に盛り込むべき最重要課題は、国民に食料を安定的に供給するために国内での食料を増産し、カロリーベースで38%、穀物では28%と異常に低い食料自給率を向上させることにあると考えます。
そのために、積極的な食料自給率目標を明記するとともに、目標を達成するための工程、農家の所得確保、多様な担い手確保などを盛り込み、実効ある計画にすることが求められます。
昨年、スーパーや米小売店の棚から米が消え、国民に著しい不安と混乱をもたらしました。価格は高騰し続けており、低所得者世帯をはじめ、国民生活が重大な影響を受けています。現在、需要量は確保されているかに見えますが、昨年の米不足で24年産米は先食いされており、政府が備蓄米の活用と米の増産に踏み出さなければ今年も再び米不足が引き起こされかねません。
以上の趣旨から、下記の事項について速やかに実施することを強く求めます。
記
1 食料・農業・農村基本法に基づいた「食料・農業・農村基本計画」に食料自給率を向上させる積極的目標と、達成に向けた施策を明記すること。
2 米不足を再び発生させないために、米を増産し、農家が安心して米を生産し、国民が主食として米を食べ続けることができるよう対策をとること。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出します。
令和7年3月14日
岩手県奥州市議会
提出先 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、農林水産大臣
令和7年度予算に係る政策提言に関する附帯決議
令和7年度各会計の予算審査においては、倉成市長が描く「未来への希望が持てるまち」の実現に向け、未来羅針盤プロジェクトが本格始動し、「未来投資枠事業」や「市政発展のための戦略プロジェクト」により、どのようにまちづくりが進められるのか審査を行った。
その中でも「決算認定に係る政策提言に関する附帯決議の処理状況」を中心に、それらが新年度予算において確実に反映されたかを中心に議論が交わされた。
総務部門では、奥州市未来羅針盤図における各プロジェクトの事業実施に当たっては分野横断的、部局横断的に連携し、効率的かつ効果的な事業推進に努めていくこと、また、シティプロモーションの推進に当たっては、市民及び企業と連携した情報発信や市公式マスコットキャラクターおうしゅうたろうを活用した取組等を行っていくことが確認された。
次に、教育厚生部門では、「福祉、医療等における人材の確保及び病院事業における経営改善」に当たっては、病院事業の経営改善には人材確保、特にも常勤医師の確保が重要であるが、医師の退職により令和6年度当初より少ない医師数で令和7年度がスタートすることが確認された。また、医師等の確保策をさらに重点的に進めることや、さらなる病院事業の経営改善への取組が必要との意見が出された。
次に、産業経済部門では、商工業の賑わい創出に向けた拠点施策の取組や創業支援の拡充に当たっては、メイプルの再稼働に向けた事業実施や創業塾・セミナーにより創業の機運醸成等を図ること、また、農林業の次世代農業振興と担い手育成施策の拡充に当たっては、スマート農業の導入、地域おこし協力隊制度や森林環境譲与税を活用し、農業経営力の強化や担い手の確保と育成に取り組む方向であることが確認された。
次に、建設環境部門では、環境にやさしい循環型のまちをつくり、市民一人ひとりの安心・安全で快適な暮らしが確保できるようにするため、引き続き、環境基本計画に基づき各種事業を展開していくこと、また、道路、上下水道等の公共インフラ整備については国の補助金、交付金等、有利な財源の確保、活用に努め、計画的に取り組んでいくことが確認された。
以上の認識の下、先の決算認定時に提言した多くの項目が、実現に向けて着実に進められている中にあって、なお、令和7年度予算において一層の努力が必要である下記事項に対し、令和7年度中における課題解決の取組がなされるよう市長に対し政策を提言表明する。
記
1 福祉、医療等における人材の確保に当たっては実効性がある取組を進めるとともに、病院事業においてはさらなる経営改善に努めること。
以上、決議する。
令和7年3月14日
奥州市議会
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更新日:2025年10月08日