奥州羅針盤(6年12月)
NHK朝ドラの「虎に翼」の主人公役・伊藤沙莉(いとうさいり)さん、そして主題歌を手掛けた米津玄師(よねづけんし)さんの対談番組を拝見しました。
このドラマは、戦中戦後に法律の世界で苦闘した日本初の女性弁護士をモデルとしています。対談の中で米津さんが、世の中の不条理と戦う女性を表現するために、朝ドラにふさわしくない「空に唾を吐く」という表現を使ってみたと語ると、伊藤さんは、その歌詞の前にある「口の中、はたと血が滲んで」がとても印象に残ったと語り、理不尽な制度と戦う女性を演技するための工夫を彼女の表現で伝えてくれました。
米津さんは、徳島県出身で地方の文学青年のイメージがあります。中学時代は宮沢賢治の本を好み、家族の中では祖父が大好きで、その祖父が亡くなった時に捧げた歌があの大ヒット曲「LEMON」なのだそうです。染みますねえ~。
ところで、法律というと「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉が浮かびますが、元々は血管や肺の柔軟性を表現する医学用語が語源といわれています。すなわち、法を守ることは当たり前で、法律を作る側も執行する側も人間が息苦しくならないように、柔軟に対処すべきであるというメッセージが込められています。米津さんが対談の中で、「人の存在があって法律がある。息苦しい時は、法律を変えなければならないと思う」とど真ん中の指摘をしていたことに驚きました。さすが、希代の能役者である東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)を生んだ徳島県出身だと思いました。
「光る君へ」の次の大河ドラマは、写楽を見いだした江戸のメディア王を描く「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つだじゅうえいがのゆめばなし)~」だそうです。これも楽しみですね。

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更新日:2024年11月28日