牛と人とのかかわり The Relationship between Cattle and Human
肉の利用The Use of Meat in Japan
日本初の肉食禁止令は、日本書紀〔養老4年(720)、舎人親王〕に記されており、天武4年(675)、天武天皇の命として書かれています。この真意については、仏教の教えによるものとか、渡来人を取り締まるためのものなどの説があります。いずれにしても、当時、日本にウシがいてそれを食べていた人がいたことがわかります。この後も肉食禁止令はたびたび出されますが、サルを除く野生動物の肉食は禁じられていません。明治の文明開化以前にも薬餌として牛肉は食されており、幕末の宿場町の写真に「薬種・江州彦根生製牛肉漬」と記した看板を見ることができます。
明治に入ると、文明開化により牛肉食が一躍時代の最先端の食べ物として取り上げられます。当時の様子を描いた安愚楽鍋には、新聞を片手に牛鍋をつつく洋装の男が描かれています。しかし、長く続いてきた牛肉食を禁ずる風習は根強く、食道楽のような新聞の連載記事で牛肉食の啓発が図られたにもかかわらず、あまり一般家庭に、牛肉は普及しなかったようです。牛肉が一般家庭にも広まっていくのは、牛肉の缶詰が軍用食として採用された日清日露戦争以後のことといわれています。

主な展示資料
- 日本書紀パネル
- 包厨備用和名本草パネル
- 安愚楽鍋パネル
- 幕末の厚木(彦根牛肉を売る店)パネル
- 異人屋敷料理之図パネル
- 食道楽パネル