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ウシの生物学 The Biology of Cattle

岩手にもいた野牛The Bison that lived in Iwate

岩手県で一番南に位置している一関市花泉町から野牛の化石が発見されました。発見者の佐々木盛輔(もりすけ)氏の名前「モリ」と町の名前をあわせてハナイズミモリウシと呼ばれています。ハナイズミモリウシは、前沢牛のようなウシではなく、バイソンと呼ばれる動物です。このウシが生息していた1万5千年ほど前は、最後の氷河期の最も寒かった時期(ヴィルム氷期)にあたります。陸地に氷河が発達したことから海水面が下がり、日本が大陸と地続きになったために渡ってきたと考えられています。当時のバイソンの仲間には、ヨーロッパやアジアに広く分布していたプリスクス野牛とアメリカに分布していたアンティクアス野牛、ラティフロンズ野牛などがありますが、ハナイズミモリウシはプリスクス野牛に近い種類と考えられます。日本では気候の変化や人間の狩猟によって1万年くらい前に絶滅しました。

ハナイズミモリウシの化石は、旧石器時代の遺跡(金森遺跡)から発見されました。解体に使ったと見られる石器も出ているので、当時の人々がこのウシを捕まえて食べていたと思われます。金森遺跡からは、ウシ直系の祖先の化石も発見されたと報告されていますが、ハナイズミモリウシと同じく絶滅したと考えられています。現在の日本のウシは、弥生時代中期に渡来人がつれてきた家畜牛を基にしていると考えられています。

アンティクアスヤギュウ全身骨格化石

アンティクアスヤギュウ全身骨格化石
アメリカ
更新世後期(約2万年前)

ハナイズミモリウシ頭蓋骨化石(複製)

ハナイズミモリウシ頭蓋骨化石(複製)
岩手県一関市花泉町
更新世後期(約2万年前)
原資料所蔵:国立科学博物館

主な展示資料

  • ハナイズミモリウシ頭蓋骨化石(複製)
  • アンティクアスヤギュウ全身骨格化石
  • プリスクス野牛頭蓋骨化石
  • ラティフロンズ野牛頭蓋骨化石(復元)
  • ラティフロンズ野牛頭蓋骨化石(複製)

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