ウシの生物学 The Biology of Cattle
日本のウシ(和牛)Japanese Cattle(WA-GYU)
和牛品種には、黒毛和種、褐毛和種(高知系/熊本系)、無角和種、日本短角種の4品種5系統があります。
このうち、褐毛和種は品種改良の過程が異なる高知系と熊本系の2つの系統を含んでいます。これらは全て肉用品種ですが、霜降りの入った高級牛肉を生産する品種は、黒毛和種であり、その飼養頭数は、和牛のうち約9割以上を占めます。前沢牛も黒毛和種です。
これらの和牛品種は、純粋な日本のウシではありません。明治時代に日本のウシと外国のウシとを交配させて品種改良が行われたからです。現在の和牛品種は交雑牛、改良和種という過程を経て、昭和19年(1944)に固定されたものです。〔日本短角種は昭和32年(1957)〕。それでは、純粋な日本のウシはいないかと問われれば、山口県見島の見島牛と鹿児島県口之島の口之島牛をあげることができます。見島牛の産地は、国指定天然記念物に指定されています。口之島牛は、大正時代の初期に山に逃げたウシが再野生化したもので、現在でも野生状態で棲息しています。

和牛品種

黒毛和種ツル-タイプ雄・雌
- 黒毛和種:
- 毛色は黒の単色。筋肉内に脂肪交雑(霜降り)が入り、高級牛肉を生産する。中国地方原産。地域によって様々な外国品種で改良された。現在は、日本中で飼育されている。
- 褐毛和種:
- 高知系は、主に韓牛を用いて改良された。熊本系は、主にシンメンタールを用いた。
- 阿蘇山の山麓に放牧されているのは熊本系褐毛和種。
- 無角和種:
- 山口県原産。アバディーンアンガス種との交配により作出された角のない品種。増体に優れているが、肉質が輸入牛肉に近い。現在では試験場で保存されている。
- 日本短角種:
- ショートホーン種を交配して作出された。放牧に適する。改良時にデイリーショートホーン(乳用)とショートホーン(肉用)とを区別しないで交配したため、肉用種としては乳量が多く、哺育能力に優れている。
主な展示資料
- 和牛品種パネル
- 黒毛和種ツル-タイプ雄・雌
- 種牛図譜(たねうしずふ)(写真)
- 第2回内国勧業博覧会出品牛(写真)