菊地庸之(きくち のぶゆき)さん

東京・新橋で修行し、地元奥州市で2020年3月に焼鳥店をオープンさせた菊地さん。

9年越しの地元への熱い思いを語っていただきました。

菊地庸之さん

出身地:奥州市出身(Uターン)

移住時期:2020年1月 世帯で移住

職業:飲食店経営

Q.奥州市へUターンしたきっかけは?

高校卒業後、奥州市で就職し数年過ごしていましたが、当時地元には、本格的な焼鳥店がなく、ずっと自分で店を開きたいと思っていました。2011年の震災をきっかけに『やりたいことをやらなければ』と一念発起し、焼鳥激戦区の東京・新橋へ焼鳥修行に行くことにしました。そこから約9年、やっと地元で開業する決意を胸に奥州市へ戻ってきました。9年間で結婚し子供が産まれたこともUターンの大きなきっかけになりました。

Q.移住のプロセスについて

■いつ頃から移住を考え始めましたか?

もともと地元へ戻る予定でしたが、修行を始め6、7年過ぎたころ、少しずつ自分の店を持つイメージが湧き、漠然と移住を考え始めました。その後子供が産まれ、いよいよ戻るタイミングだなと感じました。共働きで、私も妻も仕事が忙しく、二人きりで子育てしていくことがとても大変で、これは早く戻らなければと強く感じました。

■移住活動はどのようなことから始めましたか?

まず初めは、移住フェアへの参加でした。その時ちょうど子供が産まれるころで、実際に移住するのは子供がもう少し大きくなってからだなと思っていました。

その後、地元で焼鳥店を開業させるため、店舗探しを始めました。地元ではありましたが、飲食業界とは無縁で、コネクションもなく、なかなか物件が決まりませんでした。やっと良い物件が見つかったのは、探し始めて2~3年した頃で、最終的には同級生の繋がりから見つけることができました。

■開業準備は大変でしたか?

東京在住時から店舗探しをはじめたので、仕事や費用の面で頻繁に行き来することが難しく、即決しなければならないことばかりでした。はっきりしたビジョンがなかったら難しかったと感じます。資金については、東京で貯めた自己資金で開業し、市の補助金75万円(『商店街新規出店促進事業補助金』と『魅力ある店舗づくり支援事業補助金』)も申請できました。また、開業後には融資のあっせんや利子補給の制度も利用しました。そして、引越し後の1月から店舗改装をはじめましたが、その年は稀にみる暖冬で、雪が少なくとてもスムーズでした。

■住まい探しはどうしましたか?

半年くらい大手物件サイトを毎日検索して見つけました。引越し時期を先に決めていたので、間取りや家賃など希望に合った物件はあるものの、時期が合わず少し苦戦しました。最終的には、引越し2ヵ月前に契約に踏み切りました。家賃を二重に払うことになりましたが、今は快適に暮らせています。

それから、引越しが1月の閑散期だったので料金が破格でした。繁忙期の1/2以下の価格だったようです。また、これはたまたまですが、引越しの日に雪が降らなかったこともよかったです。ただ、小さい子供を抱えての引越しは大変でした。

Q.移住後の生活の変化は?

■毎日の生活で変化したことは?

時間の使い方が一番変わりました。東京にいた頃は、仕事の拘束時間が長く、通勤時間も片道1時間くらいだったため、プライベートな時間がほとんどありませんでした。しかも睡眠時間は1日平均3時間くらい。また、通勤に関しては、ラッシュ、電車の遅延・運休などで毎日ストレスを感じていました。その頃に比べると、今は健康的というか人間らしい生活が送れています。そして、家族と過ごす時間が多くなったことが嬉しいです。

あとは、自営業なので、自由な反面プレッシャーは大きくなりました。それでも今の方が断然楽しいです。店を通して交友関係が広がったこともよかったです。

■困ったことは?

移住して数ヵ月は収入がなく不安でした。それに、コロナ禍でオープンして本当にお客さんが来るだろうか…という不安もありました。

今では常連さんも増え、少し不安は解消されましたが、やはり仕事の苦労は耐えません。わかってはいましたが、様々な面で東京との違いを感じます。地産地消の難しさもあり、課題がたくさんあると思います。「地元の良質な食材を、東京で学んだ技術でさらにおいしいものにして、地元の人たちに提供したい」そういう思いで問題をクリアし、やきとりのおいしさを伝えていきたいです。

■休日は何をしていますか?

家族で過ごすことが多く、子供と遊んだり、近くの観光スポットに行ったり、実家に行くことも多いです。自分の育った大自然で、子供がのびのび楽しそうに遊んでいる姿は、東京にいる頃とは違うなと感じます。

あとは、焼鳥のことをずっと考えています。

菊地庸之さん
平日のスケジュール
07:00
起床・育児・家事
11:00
出勤・仕込み・開店準備
17:30
開店
22:00
閉店・片付け
23:00
帰宅
00:00
就寝

Q.あなたにとって奥州市とは?

私にとっては育ったまちなので、落ち着く、住みやすいまちです。自然豊かで、四季が感じられ、生きている実感がわきます。そして、時間がゆっくり静かに流れ、穏やかな人が多いと思います。よくも悪くも、緩く、やんべに( “ほどよく"や“だいたい"といったような意味)という雰囲気が流れています。ただ、私の小さい頃は商店街にもっと活気があったのに、今は活気が薄れ寂しく感じます。自分の店を通して、少しずつまちの活気を取り戻したいです。

他には、アクセスが良いことが強みかなと。東京へ新幹線1本、2時間ちょっとで行けるので、勉強のために東京に行ったりする際に便利だなと感じます。

Q.移住を検討されている方へ一言お願いします!

まずは「ふるさと回帰支援センター」や市町村の移住相談窓口に相談することをお勧めします。市町村窓口では支援制度などについて詳しく教えてもらえましたので、しっかり確認した方が良いと思います。そして、できるだけ計画的に、移住後にやりたいこと、ライフスタイルの希望ははっきりさせておくとよいと思います。

実際、良いことも悪いこともあり大変ですが、「やりたい」「今だ」と思ったらまずやってみる、人生一度きりなので後悔しないように、たくさんの人に自分の希望を実現させてほしいと思います。あとは、気持ちに余裕を持つことが大事です。

地元にいるとなかなか良いところが見つけられなくなるのですが、一度出てみると良いところがたくさん見つかりました。奥州市を一緒に盛り上げてくれる方、ぜひ待っています。

菊地庸之さん