三上真惟子(みかみ まいこ)さん

生まれ育った東京を離れ、ご主人の故郷である奥州市へ移住された三上さん。

引き続き移住前のお仕事をテレワークで行っているそうで、「転職なき移住」を果たされました。何より、生活の拠点を移すのは今回がほぼ初めてという三上さんにとって、奥州市はどのように映っているのでしょうか。

三上真惟子さん

出身地:東京都中野区(Iターン)

移住時期:2022年10月

職業:会社員

奥州市へ移住するまでのプロセス

■奥州市へ移住したきっかけは?

奥州市出身の夫との結婚を機に、移住しました。

子どもの頃、海外で生活したことはありましたが、その後、物心ついた頃からずっと都民でした。当時、東京で働いていた夫と出会い、数年後には奥州市へ戻るつもりだと聞いていたので、いつか自分も岩手に行くのかもしれないと、覚悟してお付き合いしました。ただ、早くても5年後くらいの話だろうと思っていた矢先、彼が奥州市へ帰ることになり、すぐに遠距離恋愛が始まりました。交際から1年後には婚約をしましたが、当時の私は、岩手に行くなら仕事を辞めなければいけない状況だったため、まだ仕事をしていたいという思いが大きく「結婚はするし、ゆくゆくは岩手に行くけど、少し待ってほしい」と伝えました。また、同じタイミングで他の事情が重なり、結婚も移住の時期も少しずらすことになりました。

三上真惟子さん

その間に、コロナ禍になり、仕事の環境ががらりと変わりました。テレワークで、移住後も同じ仕事を続けられることになり、4年間の遠距離恋愛を経て、昨年入籍、結婚式を挙げました。結果的には、婚約から4年ほどで奥州市に移住することになりました。

■田舎への移住に不安は?ご家族の反応は?

東京にいた頃、休日は朝から晩まで美容や趣味の予定を詰めこみ、忙しく過ごしていたので、正直、それが一気になくなってしまって、耐えられるのか…不安な気持ちでした。それに、付き合っていた4年間、年に1度奥州市へ来ていましたが、水沢江刺駅から彼の実家までの何もない道のりしか知らず、「岩手=田舎」というイメージも強かったです。両親も岩手での暮らしがどんなものになるのかピンと来ていなかったので、かなり心配していたと思います。

しかし、3年前コロナでテレワークになり、平日は一歩も家から出ない生活が続き、その頃には「どこに住んでいても生活は変わらない」と思うようになっていました。

最終的には、なんだかんだ不安はあるけれど「まずはやってみよう」「分からないことは一度やってみたい」という性格の私なので、両親も理解してくれて、覚悟を決めて飛び込みました。

■いざ準備!!

結婚後、半年ほどで奥州市へ来ました。住まいはインターネットで探し、すでに奥州市にいた夫に内覧を頼み、何度も行ったり来たりすることはありませんでした。移住するのは私一人だったし、お互い実家暮らしだったので、二人で暮らすための家具などは、新たに東京で購入しました。

移住に向けた準備としては、やはり仕事関係が重要だったと思います。

4年前、婚約をした時から、会社にはいずれ岩手に行きたいということを伝えていました。しかし、コロナ前の当時は、所属している部署でのテレワークは難しく、仙台支店へ異動するか、テレワーク可能な企業に転職するか、岩手の企業に就職するかの選択肢しかありませんでした。しかし、3年前にコロナ禍になり、テレワークが可能になったことで、東京本部に所属しながら、岩手での勤務が可能になりました。

■利用した支援制度はありましたか?

移住支援補助金を利用しました。転入手続きの際に、窓口でチラシをもらったのですが、テレワークが該当すると思わず、すぐに確認しませんでした。しばらくして、書類の整理をした際に、よく読んでみたら自分が該当することを知って、市役所に電話をしました。申請期限があったので、間に合ってよかったです。

もともとそういった支援があることを知らず、私自身「移住」という感覚もなく「引越し」という意識が強くて、支援窓口の存在も知りませんでした。来る前は、なかなか奥州市での生活がイメージできず、困っていたので、もし認識が違っていたら色々事前に相談できたかもしれないなと思いました。

移住後の生活について

■岩手でのテレワークはどうですか?

人材紹介の仕事をしていますが、東京でもテレワークを行っていたので、岩手に来てからも仕事の仕方などに変化はありません。勤務時間もほとんど変わらず、変化と言えば、家事の負担が増えたくらいです。東京にいた頃はデリバリーなどを頼むことが多かったですが、今は選択肢が少なく、少し不便です。個人店の出前などは、情報がなく利用していませんが、もし、できるところがあるなら頼んでみたいです。

東京出社については、半年に1度くらいの頻度です。コロナ後も状況は変わらず、同じチームの中には、関西や中部地方にいらっしゃる方もいます。

東京在住者も基本テレワークで、出勤は自由。会社としても、テレワークにすることで、時間もお金も削減でき、利点が多いのではないかなと思います。

■平日はお忙しそうですが、休日は何をして過ごしていますか?

三上真惟子さん

お菓子作りや、羊毛クラフト作り、遠出のドライブなど、東京にいたころとは休日の過ごし方も、少し変わりました。市内にある「藤原の郷」にシーズンごとにお花を見に行くなど、自然を楽しむ機会も増えました。自然豊かで、空気もきれいだし、星がすごくきれいだと思いました。ハワイ島でみた星を思い出すぐらいです。けれど、前と変わらず、マッサージやネイルなど、良いお店を見つけて行っています。たくさんおしゃべりしたりしてリラックスできる空間です。

それに、新鮮でおいしい食材がたくさんあるのも嬉しくて、産直来夢くんなど利用しています。また、水沢にある「龍園」の焼き肉には、感動しました。

あとは、パン屋さん探しもしていますが、まだまだ分からなくて。インターネットで情報をとろうと思ってもあまり出ていない気がして、実際に市内を回って探したり、人から聞いたりするほうが有益な情報が得られるのかもしれないと少しずつ分かってきました。

■お住まいについては?

三上真惟子さん

家賃がすごく安いです。都内で一軒家に住もうとすると20万円以上かかると思いますが、こちらでは10万円もかからず、一軒家に住めます。ただ、東京の実家で犬を飼っていて、当初、ペットが飼える物件を探していたのですが、なかなか良いところが見つけられず、泣く泣く断念しました。犬との別れはとても辛かったです。また、家を建てることも考えましたが、やはりこちらでの生活に慣れてからにしたいと思い、もう少し先にしようと思っています。

■日常の移動については?

免許は昨年末に取りましたが、まだまだ慣れなくて。運転は、週に一回程度ですが、自宅近くの道は狭く、側溝に蓋がないところがあったりするので、夫に同乗してもらわないと、怖くて運転できません(笑)

ただ、仕事で使うこともないし、買い物も歩いて行けるので、今のところ車がなくても生活できるなと思っています。今後、子どもができたら変わるかもしれませんが、今は人数分の車がなくても全然不便はありません。今のところ我が家は1台です。車の維持費は多少かかりますが、中古車が安く売られていて、購入費はかなり抑えられました。乗る頻度や距離にもよりますが、日常的な通勤や買い物程度であれば、ガソリン代もそんなにかからない気がします。駐車場に関しては無料のところが多く、トータルで考えると固定費が安くなりました。あと、タクシーをよく利用しますが、迎車料金がかからないのに驚きました。

■地域の人との交流は?

こちらへ来る際、ほとんど知り合いはいませんでしたが、平日は仕事三昧、友人たちとはオンラインで繋がっているので、まったく困りませんでした。今後、子どもが生まれたりすると、幼稚園や保育園などのつながりで交流が増えていくのかなと思っているのですが、接点がないと、コミュニティを作っていくのは難しいのかもしれませんね。

ただ、思っていたより人との距離感が東京と変わらないので、安心しています。全くわずらわしさは感じません。近所付き合いが活発だと大変なのかなと思っていたので、適度な距離感でよかったです。

奥州市で暮らして思うこと

■奥州市の印象について教えてください。

移住するまでは、ぽつんと一軒家みたいなイメージでしたが、実際にきてみると、スーパーやドラッグストアなどがたくさんあり、遅い時間まで営業していて、想像の10倍便利でした。結婚して、家族ができてから来るにはとても良い場所だと思います。お家で過ごすにしても、アウトドアなど外で過ごすにしても、楽しめることがたくさんあります。保育園などもたくさんあり、生後数か月の早期から預けられる場所があるのも心強いです。生活しやすく、人間関係の窮屈さもない、ノーストレス。関わる方も、良い人ばかりで、受け入れてもらっている感じがします。

■今後の生活について

奥州市に来てから、地方創生に興味を持ち始めたので、何かできないかなと考えています。地方との取り組み事例が社内でも数多くあるので、奥州市との協働事業を進められたらなと思っています。仕事柄、大手飲食店の方と話す機会があるのですが、奥州市のことを知らない方がまだまだ多くて、知られていないから市場に出ていないだけで、アピール次第でかなり可能性があるのではないかなと思っています。

また、自身でも起業を考えており、女性のメンタルヘルスケアや女性活躍支援などの事業も考えています。そして、実は、小さい頃から小説家になりたいという夢があり、宮沢賢治ゆかりの地、岩手で文学の道も目指していきたいと思っています。

奥州市へ移住を検討されている方へ一言お願いします!

三上真惟子さん

東京へは新幹線を使えば2時間と少しで行けて、意外と距離が近く、想像していたよりずっと便利で良いところです。便利さがありながら、安い家賃で自由に暮らせるので、テレワーカーには本当にお勧めです。自然も豊かで、ゆっくり過ごせる温泉もあり、新幹線で1時間もあれば、盛岡や仙台へも気軽に行けるのがとても良いです。テレワークの場合、収入が変わらないと思うので、ずいぶん生活がしやすくなると思います。時間もお金も有意義に使える場所だと感じています。

取材 2023年6月